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親父が倒れたと連絡を受けたのは、ちょうど仕事がひと段落したときだった。 上司に頼んで少しだけ休みをもらった。 「で?親父の具合どうなの?」 親父の寝室を出てから、テレビなどが置いてある部屋で茶を飲みながら母親へと尋ねた。 「今すぐどうなるってわけじゃないのよ。ただ、歩くことが難しくて…恐らく漁師としてはもう無理だろうって。」 親父は頭の中に腫瘍があって、身体にも麻痺が出ているらしい。 長年、漁師をやっていた親父はもっとガタイがよくて、年中日焼けをしていた。 正に“海の男”だった。 「そうか。」 「浩介も仕事があるのに無理言ってごめんね。」 「いいって。しばらく休みもらったし。」 蝉の鳴き声にここら辺の田舎では日中窓を開けっ放しにするから、心地良い風が部屋に入る。 「そーいや、もうすぐ花火大会あるのな。」 来るときに掲示板で見かけたポスターを思い出し、そう言うと母親は「あっ」と何かを思い出したようだ。 「その花火大会の日、漁業組合でお祭りの手伝いをすることになってるのよ。本部の方でなんだけど。」 「…マジか。」 親父はあんな状態だし…これは…。 「浩介、お願いできる?」 やっぱりか、とうな垂れた俺は「わかった」と返事をした。

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