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エピローグ
文化祭、バックステージにて。
円陣を組む俺たちは、お互いの顔を見て、しっかりとうなずき合う。
達紀が気合いの入った笑顔で言った。
「きょうが本番。だけど、きょうがゴールじゃない。きょうが5人の本当のスタート。間違えても変になっても、絶対最後まで楽しくやりきること。楽しくやることが、きょうの成功だから。オーケー?」
それぞれに、頼もしい返事。
俺は、緊張と興奮が入り交じった不思議な感覚で、みんなに言った。
「あのね、みんな、混ぜてくれてありがとう。最初は足手まといにならないようにばっかり考えてたけど、きょうは本当に、頑張ってお客さんのために弾くよ」
「よっしゃ! あおちゃんも気合入ったな!」
もう一度しっかり肩を組み直す。
達紀が、大声を張った。
「今年、お客さんの心をかっさらうのはー?」
「マートムだあっ!」
背中を叩き合い、ステージへ駆け上がる。
女子の「キャーッ!」という悲鳴と、腕を振り上げて盛り上がる男子。
熱狂の中チャボがマイクを握り、MC無し、合図を送ると、アーサーのスティックを上に掲げて、カウントを構えた。
ステージ左を見る。
キラキラとスポットライトを浴びる達紀が振り向いて、口パクでこう言った。
『あお、だいすき』
初めて達紀の手に触れた『G』のコードを、全力疾走でかき鳴らした。
(了)
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