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第4話 口は災いの元。
「座れ」
「はぃ……」
「何で、ベッドの上にちょこんと座ってんだよ」
「いや、だって、座れって言ったから」
「床に正座ーー!」
「はいーーっ!」
銀而は殿様に仕える忍者の如く俊敏な動きでベッドから飛び降り、床に平伏す。
「出すって何をだ? 太腿が何だって?」
「俺のムスコをアルバンの股に挟んでちょちょいと動かしたら、さぞや気持ちが良いだろうなぁ、なんて……」
アルバンの額に血管が浮きまくってる。此れはかなり怒っているとみた。只管に謝った方が良さそうだな。いや、でも、俺だけが悪い訳じゃ無ぇと思うんだよなぁ。
「その仏頂面は何だ?」
「確かに、お前の許可無しに素股しようとしたのは悪いけどさ」
「悪いけど? 不満が有るならはっきり言え」
「だってさぁ、一緒に寝ても良いなんて言われたら、挿れるのは駄目でも素股ぐらいは期待しちゃうだろ? 健全な雄なんだからよ」
「……そうか、そうだな。お前に期待を持たせた俺が悪かった」
あれ? アルバンの奴、自棄に素直じゃんか。反省しているみてぇだし、此処は一つ、俺の方が折れてやるか。
「分かってくれたんなら良いけどさ。次からは言動に気を付けろよ。相手の気持ちを推し量る事も大事だぞ」
素直に非を認めるアルバンの真意を察するどころか、調子に乗って説教までする始末。素直な性格が銀而の良さでは有るのだが、時と場合によりけり。
「ああ、そうするよ。じゃあ、お前はリビングで寝ろ。俺は一人で寝るから」
「へっ? 何でそうなるんだ?」
「お前が言ったんじゃねぇか。相手の気持ちを推し量る事も大事だぞってな。一緒に寝たら期待しちまうんだろ? それなら、別々に寝りゃあ良いだけの話だ」
今回は素直な性格が仇となったようだ。しかし、此処で諦めないのが銀而である。アルバンに必死で食下がっていく。
「確かに、そう言ったけど……、だからって別々に寝る事はねぇだろ?」
「くっ付いたら勃つんだろ? 勃ったら出したくなっちまうよなぁ?」
「そりゃあ、まぁ……、そうなるな」
適当に誤魔化せば良いものを。銀而の馬鹿正直さに、アルバンは思わず吹き出しそうになるのをぐっと堪える。
「押し入れに来客用の布団が有るだろ。それを敷いて寝ろ」
「しない出さない挟まない! 勃ちは……するけど、出すのは我慢するから一緒に寝ようぜ!」
「絶対だな? 約束するか?」
「するするするする。約束するっ!」
「もしも、破ったら、二度とウクを抱っこさせてやらねぇからな」
「はぁ? ウクを引き合いに出すなんて卑怯だぞ!」
「破る気満々じゃねぇか」
「……絶対に破りません」
「よし、入って来い」
アルバンから許しを得た銀而は、尻尾を揺らし、空かさずベッドへ潜り込む。
「あのさ、ぎゅってしても良いか? ぎゅってするだけ。それ以上は何もしねぇから」
「……ああ」
銀而は満面の笑みを浮かべ、アルバンをぎゅっと抱き締めた。今度はベッドから追い出されない様、股間部分に拳一つ分だけ隙間を空けて。
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