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第1話
「お初にお目にかかります。私はルデア。」
まるで手に届きそうなほど近くに見える月を背に、自分と大して変わらない背丈の、人とは思えないほど眉目秀麗な彼――と言ってもいいのだろうか――がまるで夜会に出席する際の挨拶のようにルデア・K ・ウェズリーと名乗り華麗に頭を下げた。
「えっと、初めまして。僕はウィリアム。
ウィリアム・ローガン」
驚きはしたが、すぐさま笑顔を浮かべて挨拶に応える。
自室にいきなり現れた彼に自ら名乗るのもどうかと思うが、特に危険な感じもしないしあまりにも丁寧な挨拶に返さなければと思ってしまい、自然と口から出てしまった。
返した笑顔を見てから品定めするかのように下から上に舐めるように見られ、最後に目が合う。
「貴方よね?私を助けてくれたのわ」
「え?」
そのルビーのように綺麗な赤い目に囚われ動けないでいると、いつの間にか距離を詰められ胸元に指が這う。それは服の上から確かめるように肌をなぞる。性的にも感じられるその動きに目が離せなくなるも、発せられた言葉に頭がついてこなかった。
「私があの蝙蝠よ。驚かせてしまったかしら?」
「蝙蝠…?あなたが?」
「そう。私吸血鬼なのよ。人間じゃないの」
「えっと…とりあえず寒いでしょう?中、入りませんか?」
話を聞いていないわけではないが、バルコニーで夜風に当たり続ける彼を空調が整えられた部屋の中へと誘う。
ルビーの瞳を大きくさせ見つめる彼は、糸が切れたかのように肩を震わせ笑いながら「そうね、お話は中でしましょう」そう言って二人で中へと姿を消した。
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