9 / 40
ゴミ、反抗を覚える。
「あっ!」
春太とテディが同時に叫ぶ。
銀色の包み紙から出てきたのは、赤青黒それぞれの戦闘服を身につけた三人のヒーロー。
紛れもない、シークレットのひとつだ。
「テディっ! ついにシークレットをひいたね!」
「〜っ」
春太が喜びの声を上げて、小さな体を抱きしめる。テディは感激のあまり声も出せずに震えていた。ぷるぷる、ぷるぷる、と腕の中で。
「た、宝物にしますっ」
鼻息荒く頷いている。
「カバンにつける?」
「はいっ。お守りにします」
テディはキラキラな瞳で喜んで、ぎゅうっと春太に抱きついた。
テディは少食だ。だからお菓子の殆どは春太が食べていた。最近では、もうパッケージを見たくないと思っていたのだが、ついに努力が報われた気分だ。
しかし、そんな喜びも夜になると薄れる。
「あっ、んぅ〜ッ!」
きゅうっとつま先が丸まる。強すぎる快感が過ぎ去るのを、息を詰めて待った。
初めての夜に比べれば少しは慣れてきただろう。
だがそれでも、あまりの気持ちよさに依存してしまいそうで怯えが生じる。
「……あの」
いつもなら声をかけてこない春太を、訝しげにルークが振り返った。
無言で続きを促される。春太は気だるい体を起こすと、ルークを見た。
「ここでこういうのするの辞めたいんだけど」
春太は乱れた金髪を整えながら伝えた。
「なぜ?」
「リビングだといつテディが来るかわからないし」
「別に困ることなどないが」
「……」
やっぱりなあ、と思った。家政婦をして三ヶ月が経つが、ルークがテディの様子を聞いてきたことは一度もない。
それはテディもだ。
「俺はやだ。……子供に見せるとか絶対にいやだ」
「それだけか?」
ルークの言葉に顔を上げる。
「他に理由は無いのか」
ドキリとした。すぐに霧散した理由が、再び浮き上がってくる。
リビングは、家族の象徴だ。
皆が集まって、他愛のない話をする、神聖な場所。だから、そんな場所で浅ましい悦楽にふけるのが嫌だった。
春太が口を閉ざしてしまうと、ルークが衣服を正して立ち上がる。
結局聞いてもらえないのかと思ったとき、冷たい声が降ってきた。
「金曜の夜。私の寝室にこい」
「へっ」
春太は間抜けな声をあげて、ルークの背中を見送った。
それから血の提供はルークの寝室で行われた。ベッドに寝転ぶ春太を、ルークの綺麗な手と唇が高めていく。
声を押し殺さずにすんだことで、前よりも敏感になった。それは、はからずともルークを喜ばせた。
「お前の血はうまい」
獣のような目をしてルークは血を啜る。
月光が彼にはよく似合っていた。
ともだちにシェアしよう!