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おわり。
「あ、雪だ」
12月25日。煌びやかな街に雪が降る。
春太は仕事終わりに駆け足で駅をくぐりぬけると、二人の待つマンションへと向かった。
高層ビルの最上階からは、灰色の夜空がよく見える。
ちらほらと降りそそぐ雪に見とれながら、鞄から取り出した鍵で扉をあけた。
「あ! はるちゃん、おかえり!」
「遅かったな。早く手を洗ってパーティをするぞ」
橙色の光に照らされて、リビングから二人の親子が駆けてくる。
ルークとテディの頭には、赤いサンタの帽子がちょこんと乗っかっていた。
「なにそれ、俺のもある?」
「うん! はるちゃんのもあるよ〜」
テディがパタパタとやって来て春太にぎゅっとしがみつく。その後ろをルークがゆっくりと追いかけた。
あたたかい頬を撫でると嬉しそうに愛らしい笑顔が返ってくる。
一年前には見られなかった暖かな部屋の中には、春太の大切なものがいっぱいだ。
玄関に飾られた三人で映るテーマパークで撮った写真とお土産もそうだし、色んな水族館で新しく購入したガラスの置物もそうだ。
リビングにも三人の思い出の品がいっぱいある。
そこには春太がずっと求めていた、賑やかで暖かな家族があった。
春太は靴を脱ぐと二人を振り返る。
「ただいま」
おかえりと声が返ってきて、春太は幸せそうに笑った。
∮
以上にて終わりになります。
お付き合いくださった皆様ありがとうございます。
そして、いつになるかは分かりませんが。
落ち着きましたら「吸血鬼編」を更新する予定です。
またどこかでお会い出来ましたら幸いでございます。
あじ
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