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俺の恋人は素っ気ない②/蓮二のぼやき

 俺の可愛い恋人は、おそらく「絶倫」と呼ばれる(たぐい)の人間だ。    夜の営みに毎度毎度二時間以上かけ、何度も射精し、させられるのは普通なのだろうか? 他人に性事情を聞くことはできないからわからないが、これは一般的じゃないと俺は思う。  智のことは好きだし大事なパートナーだと思っているからこうやって同じ家に住み生活しているのだけど、こればっかりは体がもたないからなんとかしてほしいと思ってしまう。    そして本人には全く自覚がないのが困ったところ。  顔を合わせばさっきみたいに俺の体を(まさぐ)ってくる。隙あらばモゾモゾと纏わりついてくるのも鬱陶しいと思ってしまうことがある。好きな奴にこんな感情を抱いてしまうのもどうなんだ? と悲しくもなるが、毎度のことなのでしょうがないのだと割り切る事にした。辛辣なわけじゃない。付き合いも長くなれば何事も言いやすくなるってことだ。けれど「したくない」とはっきり言ったところで欲情してしまった智は聞く耳を持たないのも知っている。  辛い──  きっと俺は智と違って性に対して淡白なのだろう。それでも求められれば嬉しいし安心する。愛されていると実感できるこの行為は嫌いではないはずなんだ。智のあの熱のこもった瞳に見つめられれば、自然と体の奥から緩んでくるような感覚に襲われる。鍛えぬかれたあの体だって俺が独り占めしてると思ったら気分が良かった。身も心も蕩けるような快楽に、溺れるように智に体を貫かれるのも嫌じゃない。  ただ時間が……それにかける時間が長すぎるんだ。  そもそも一緒に住んでいてもお互いの仕事の関係上、同じ時間を過ごせることが少ない。  塾の講師をしている俺は出勤時間は午後からが多く、残業も多く帰宅も遅い。日曜と月曜日が基本的に休みだけど、特別講習だったり模試の関係で出勤になったりもする。出会った頃と違いキャリアも上がったおかげでかなり忙しく働いている。智に言わせると「ブラック」なのだそう。でも好きな仕事だし、これは当たり前のことだと思うから辛いと感じたことは一度もなかった。俺にとって智とのセックスの方がむしろ辛い……  そして工場勤務の智は二交代制で、朝早くから出勤だったり、夕方から夜中までだったり。智が早番の時に少し夜更かしをして俺の帰宅を待ってくれたり、遅番の智に合わせて俺が起床したり、と、お互いが意識しないと気づけば数日会っていない、なんて事がよくあった。  今日も恐らく俺の帰宅を待ってくれていたのだろう。  今週の智は早番だった。起きる時間も早朝六時頃のはず。俺は仕事を持ち帰りすぐに部屋に入った。それから小一時間は経っているから既に深夜一時も過ぎている。それなのに、今からしたんじゃ智は寝る時間がなくなるんじゃないか?   しょうがない……と俺は仕事を切り上げ智に待つように言い、いそいそとバスルームに向かった。残った仕事は特に急ぎでもないから明日やればいい。智の睡眠時間の方が大事だ。寝不足で事故でも起こされたらたまったもんじゃない。寝不足の原因が「恋人とのセックス」だなんて笑えない。  俺からしてみたら体力お化けの智は、行為で「疲れる」なんて感覚はないのだろう。だけど睡眠は大事なんだ。特に智みたいに体を使うような仕事を毎日続けるには、ちゃんと休息が必要なんだ。俺なんかのために智が体を壊しでもしたら目も当てられない。  だから今日の目標。  トータル一時間以内でフィニッシュ& 睡眠時間四時間キープ──  そんなことを考えながら俺はシャワーで体を浄化する。  そして毎度のことながら、この目標が達成できるのか不安に思いつつ、智の部屋に向かった。

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