1 / 20

第1話

 千石 克也(せんごく かつや)は、悩んでいた。  一流商社の部長というポストにある彼が悩むのは、業績のことでも部下のことでもなかった。  一人息子の、千石 悠希(せんごく ゆうき)のことだ。  幼い頃から、引っ込み思案な悠希。  もう高校生になったが、友達ひとり家に連れてきたことが無い。 (いじめに遭っている、とは聞かないが。しかし、他人との交流が苦手とあっては、将来が不安だ)  不景気な顔で書類に目を落としても、頭に入らない。  気分を変えようとコーヒーを淹れに席を立った時、部下の一人が話しかけて来た。

ともだちにシェアしよう!