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第1話
蛇は飛べなくなった鳥に恋しました。
鳥は蛇に怯えませんでした。
「食べたければ食べろ」
そう諦めたように言ってさえみせました。
蛇は鳥を食べないと言いましたが、鳥は不思議な顔をするだけでした。
「お前が食べなければ誰かが食べるだけだぞ」
鳥は言います。
飛べなくなった鳥だから。
「オレが守る」
蛇は言いました。
蛇は鳥を守りました。
必死で。
夜は鳥を抱きしめて守りました。
「お前はつめたい」
鳥は笑いました。
「お前は暖かい」
蛇は囁きました。
鳥を温めてやれないのは悲しかったけれど、鳥の温もりに心が癒やされました。
でも、飛べない鳥をどんなに守っても。
鳥は弱っていきました。
「飛べない鳥は死ぬだけなんだ」
鳥は弱りながらも微笑みました。
蛇はなんとしてでも鳥を元気にしてやりたくて。
でも、できなくて。
「飛べない鳥に価値があるって思ってくれてありがとう」
鳥はその日そう言いました。
そして、翼は失っても残ったその声で蛇のために歌いました。
鳥の歌を蛇は泣きながら聴きました。
それは鳥の気持ちだったから。
蛇が知ることのない空の歌を教えてくれて、鳥は死んでしまいました。
蛇はその亡骸を食べてしまいました。
他の誰にもたべられないように。
鳥は蛇だけのものだから。
蛇は心の中に鳥が歌った空の歌を響かせます。
歌はずっと蛇と一緒にあるでしょう。
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