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41.恋する幼馴染
奏汰 side
『只今の時間を持ちまして星雲祭は終了となります。一般のお客様はお気をつけてお帰り下さい。生徒の皆様は速やかに後片付けを行い、下校しましょう』
ピンポンパンポーン
生徒会からの館内放送が流れ、それを聞いた生徒たちが次から次へと片付けを始める。
俺達もそれは例外ではなく、一斉に部室を元に戻していく。
「匠海先輩、碧葉先輩、夏向先輩、本当に今回はありがとうございました」
「俺達も楽しかったしな」
「うんうん、高校生に戻ったみたいでね」
「そうだ、雅也、深月、受験頑張れよ~」
そうして粗方片付け終わった頃、OBの先輩達がそれぞれ言葉を放って、帰って行った。
「よっし、じゃあ俺達も下校、の前に、お前らちゅうもーく」
それを見送り各々帰り支度を始めた次の瞬間、部長の掛け声に動きをぴたりと止める。
「よし、よし。とりあえず星雲祭お疲れ様。今年も結構繁盛したんじゃねーかな。それもこれも一人一人一生懸命取り組んだおかげだな。ありがとな、お前ら」
「な、何すか部長、急に改まって……」
「雅也先輩が真面目な事言うと何か裏があるんじゃないかと……」
「奏汰も颯希も言うようになったじゃねえか……」
「あはは、確かに雅也はあんまり真面目な事言うことなかったもんねー」
「それもそうですね」
「深月に裕まで……たくっ」
「あれ、否定しないの?」
「否定はできん!なぜなら実際その通りだと自分自身が一番よくわかってるからな!!」
いや、そこで威張られても……
なんて考えが頭を過ったが間一髪のところで飲みこんだ。
そんな俺の何とも言えない表情をスルーして部長は言葉を続ける。
「いやー、最後くらいはきちんとしておいた方がいいかなって思って」
「「最後?」」
「そ、最後。俺と深月は今回の文化祭でアニメ漫画研究部引退だからな」
引退、忙しない日々の中ですっかり忘れていたその言葉。
でも普通そうだよな……
運動部は夏の大会で引退しているし、文化部は文化祭が終われば引退だってクラスの奴らもぼやいていた。
部長も、深月先輩も特に何も言わないから思い浮かびもしなかった。
そうやって考えていれば部長が再び言葉を紡いでいく。
「まぁ裕とは1年ちょい、奏汰や颯希とは半年くらいの付き合いだったけどさ、スゲー楽しかったぜ」
「最初は新入部員一人も入らなかったらどうしようか、なんて話してたけど本当に2人が入ってくれてよかったよ。ありがとう」
「いや、そんな、正直最初はこのノリについていけるのか不安だったし、部長はいちいちテンション高くて声がデカくてうるさくて、深月先輩は先輩でまともな人だと思っていたら意外と茶目っ気があって色々振り回されることも多かったっすけど楽しかったです」
「そうちゃん、余計な本音が出てる出てる」
「奏汰、お前本当に言うようになったな」
「えー俺は雅也や裕よりはましだと思うけどな」
「いや、正直深月先輩が雅也先輩や俺なんかよりよっぽど立ち悪いっすからね」
「それはどういう意味かな裕」
「あはは~」
「でも、明日から雅也先輩も深月先輩も部室にいないんですね、寂しくなるな……」
「颯希……」
「あーもう!しみったれた空気は無し無し!!引退しても3月までは学校にいるわけだし、廊下とかではすれ違うだろうしな!だからそんな顔すんなって、てな訳で解散!」
そう言って二カッと笑う部長の言葉で締めくくられ、部長、雅也先輩と深月先輩と漫研として過ごす日々は終わった。
分かれ道でヒロ先輩と別れて颯希と二人、ゆっくりとした歩調で帰る。
そうしているとぽつりと颯希が呟いた。
「さみしくなるね」
「あぁ」
「来年新入生入ってくるといいね」
「て言うか入ってこなかったら困るだろ」
そう、雅也先輩と深月先輩が引退した今、俺たちは俺と颯希が入部する前の漫研と同じ状況に立っているのだ。
来年、最低でも2人入らないとやばいって言うか廃部にはならなくても同好会になってしまう。
俺としては同好会も部活も変わらないんじゃ……なんて気もしているのだが、それをまだ俺たちが入部したころにうっかり口に出した時のヒロ先輩の形相を思い出して頭を振ってその考えを打ち消す。
「新入生と言えばさ、裕先輩と健くんの事もそうだけど、健くんが連れてきた昴って子と、健くんの関係性も結局聞けずじまいだったねー」
「あー、だな」
「昴くんに漫研入ってもらえるよう健くんに頼んどこうか」
「そんな上手くいくかぁ?」
「大丈夫、大丈夫~」
そう言う颯希の顔はさっきよりも明るくなっていて思わず小さく笑いがこぼれた。
「ちょっと、そうちゃん何笑ってんのさー」
「別に、なんでもねーよ」
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