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9.恋する警察官

 健斗 side  そんな事件から半年後、昴は無事地元の中学へ進学した。  昴が引き取られた施設にほとんど毎日のように様子見だって言いながら足を運んでいればそこの職員の人たちとすっかり顔なじみになっていた。 「おーす、昴元気にしてるか~?」 「健斗さん......」 「んーなんだなんだ、その何か言いたそうな顔は、」 「えっと......」 「ほら、遠慮とかいらねえ何かあるなら聞いてやっから言ってみろよ」  そう、おでこを軽く小突いてやれば、バッと昴が顔を上げた。 「あの!何でこんなに俺に構ってくれるんですか......?確かにお母さんとの事があって色々お世話になりました。けど今ではもう施設できちんと保護してもらってるし生活も普通の人並みにできるようやななりました。一警察官である健斗さんが俺を目にかける理由はもう無い、と思います」  そう段々尻すぼみになりながら言う昴の頭を思いっきり撫でながら俺は 「んなのお前が好きだからに決まってんだろ」  と言ってやった。  すると何を勘違いしたのかこいつは。 「俺も健斗さんの事お兄ちゃんがいたらこんななのかなって思うくらいに好きですよ」  なんて抜かしやがった。  しかもめちゃくちゃ綺麗な笑顔で 「はぁ~~~」 「え、何ですか!?その深い溜息、迷惑でしたか?兄みたいだなんて図々しかったですかね」 「ちっげぇよ!!あーあれだその俺の好きってのはそういうこっちゃ無くてだな」 「そーいうこと?? 」 「だから!お前のこと愛しちゃってんの、俺は!」 「は......はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?あ、あい、あああい!?」 「ブハッ」  俺の突然の言葉にらしくも無く慌てる昴に思わず吹き出してしまう。 「落ち着けって、ははは」 「な、なななななに笑ってんすか!?てかあんたのせいだろ!!」 「だって仕方ねーじゃんお前のこと俺のもんにしてぇって思っちまったんだもん」 「もんって......」 「まぁそういう事だから。俺がお前に構うのは俺が好きでやってることなので、お前が変に気を使う必要は全くありませーん」 「え、あ、はい......」 「んじゃ今日は帰るわ」 「え!?」 「えってなんだ、えって」 「いや、だってさっき来たばっかなのにもう帰っちゃうんですか?」 「お前なぁ......」  昴に引き止められて嬉しいとは思うがそれと同じくらい俺は恥ずかしくて今すぐ家に帰りたいんだよ!  なんて、言えるわけもなくため気だけ吐いてしまう。  それを呆れと感じ取ったのかワタワタしながら昴が口を開いた。 「あ、あの俺!本当に健斗さんには感謝していて、お兄ちゃんみたいだって思ってて好きだってのも本当で、だけどそれ以上の感情が無いのかって言われたらわからなくて、俺まだそのあいっしてるだとか恋愛の好きと家族の好きの違いとか分かってなくてえっとだから、その......」  そうやって声を裏返しながらも一生懸命言葉を紡ぐ昴が愛おしくて、可愛くて、思わず俺の腕は昴へ伸びて抱きしめていた。 「けっ健斗さん!?」 「あーもうお前なんなの可愛すぎ、俺の事殺す気か」 「かっかわっ......!?」 「いーよ、別に今すぐどうにかしてーって訳じゃねえし、そりゃ、キスしてーなーとか色々お前で妄想することはあるけど」 「妄想?」 「あー、まぁお前もそのうち授業で習うだろ。とりあえず!別に今すぐ答えなんて出さなくていーよ」 「じゃっ、じゃあ......待っててくれますか?俺のこの感情に名前がつくまで」 「元からそのつもりだ」  そう言えばホッとしたような顔をして笑うからこいつも絶対俺のこと好きだろと思わんでもなかったがそれを言うのはぐっと堪えた。

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