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6.恋する後輩
愁也 side
「じゃあまた明日~」
「気をつけて帰れよ」
「うっす!失礼します!!」
通学路の別れ道、先輩方に挨拶を済ませて俺は一人歩き出す。
いつもだと帰り道が同じ方向のヒロ先輩と二人っきりになれるこの時間が好きだ。
けれど今日はヒロ先輩もおらず一人っきり、それに対して寂しいな、なんて感情が浮かんで思わず苦笑してしまう。
高校生になって、ヒロ先輩と出会って、漫画研究部に入って、色んな人との繋がりが増えた。
今までずっと周りは俺の家の事ばかりで俺を見てくれない、俺自身と向き合ってくれない、そんな人この先ずっと現れないんだ……って、そう思っていた。
昔から常に俺の周りには人が沢山いたけれど、ずっと寂しかった、孤独だったんだ。
けれど今はどうだろうか?
優しい人達に囲まれて、皆家のことなんて関係なく俺を九条愁也自身を見て接してくれる。
俺はそれがどれだけ幸せなことか分かっている。
「それもこれもヒロ先輩のおかげ、だよなぁ」
あの人とあの日、出会ったことによって変わったんだ。
そんなのだから好きにならないはずがない……!!
単純だって笑われたって、馬鹿にされたって良い、だってこの気持ちは、ヒロ先輩に対する想いは本物なのだ。
まぁ、本人には軽くあしらわれているんですけどね!!
一目惚れ、だったと思う。
綺麗に繰り出される蹴り技がカッコイイって思った衝動的な気持ちだったんだ。
けれどそれからヒロ先輩を追っかけて、漫画研究部に入って、一緒に過ごす時間が増えて、ヒロ先輩の事を一つ一つ知っていく度にもっともっと好きになっていく。
こんなに誰かを好きになるだなんて考えた事も無かった。
一緒にいるだけでポカポカした気持ちになって、話をするだけで楽しくて、喜んでる姿を見るだけで自分まで嬉しくなってくる、恋って凄い。
「ヒロ先輩今、何してんのかなぁ……」
そうヒロ先輩のことを思い浮かべながらぽつりと俺が呟いた次の瞬間
「おう、お前か九条愁也ってのは?」
何ともガラの悪そうな男の人に話しかけられました。
わ~見た事あるぞこの展開!
「いえ、人違いです!」
元気よく返事をして回れ右をする。
「嘘つくなよ愁!」
そう言って俺の肩を掴んだのは
「た、鷹先輩!?」
鷹先輩だった。
その後ろには真先輩もいる。
「お前最近笹原裕に付き纏ってるみてーじゃねーか」
俺の混乱を他所に男が再び口を開く。
「ちょっと一緒に来てもらおうか」
何でそこでヒロ先輩の名前が上がるんだ、とかあんた誰、とか色々思うことはあったが非力な俺は腕をがっしり掴んでくる鷹先輩達から逃げ出すことも出来ずそのまま連行される形で歩き出す。
あぁ、俺は一体どうなってしまうのでしょうか…?
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