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夏の思い出、作ります!・5

 避暑地でのプール遊びを堪能して海原町に戻ってから、数日後。  俺は訪ねてきた瑠偉を見て、目を丸くさせた。 「あ、あれ……お前、瑠偉か?」 「どうもです、千代晴さん。ナハト君のアドバイスで、イメチェンしてみたんですけど……」 「お、おう……」  黒縁の分厚い眼鏡がコンタクトになり、ボサボサだった黒髪がすっきりとした短髪になり、猫背だった背中もしゃんと伸び、服も今風のファッションになっている。 「……思いっきりナハトの趣味だな」 「動画も顔出しするようになって、前より再生数も伸びるようになったんです。ナハト君が親身になって僕のために色々教えてくれて……」  なるほど。ナハトはダイヤモンドの原石を掘り当てたということか。 「瑠偉くん、カッコいいです!」 「ありがとう、ヘルムート君。……そ、それじゃあこれから、ナハト君と出掛ける予定なので……」 「ああ、上手くやれよ。あいつは褒めれば褒めるだけ有頂天になって機嫌も良くなる。変な真似しそうになったら瑠偉が止めてやってくれ」  最後に深く頭を下げて、瑠偉が隣の102号室の呼び鈴を押した。  俺達も部屋に戻り、ベッドの上に並んで寝転がる。 「瑠偉くん、ナハトとお付き合いしてくれますかね?」 「後は二人の問題だ、俺達が心配することじゃねえさ。まあでも、きっと大丈夫だろうな。ナハトの方がべた惚れみたいだから」  この分だと近いうちに瑠偉も童貞卒業できるだろう。……いや、案外とっくに済ませているかもしれない。 「千代晴、嬉しそうです」 「まあな。……あ、ところで。ナハトも子供が産める体だったりするのか?」 「多分、ナハトの星では女性しか赤ちゃん産めないと思います。本人は欲しがってるみたいですけど……」 「確かにナハトが妊娠可能だったら、とっくに何人も産まれてるか……」  俺はヘルムートの腹を撫で、この体内に存在している愛しいタマゴに「テレパシー」を送った。 〈安心して産まれて来い。必ず俺がお前もヘルムートも守るからな〉  通じているかは分からないが、こうすることで俺の中でも父性が育まれて行くのが分かる。今では朝晩は必ず、日中でもたまにこうして我が子にテレパシーで話しかけているのだ。  ──早くお前に会いたい。 「千代晴、赤ちゃんタマゴの中で笑ってます」 「どんな子が生まれるだろうなぁ」 「千代晴はサメさんがいいですか?」 「何だっていいさ。ナマコでもウミウシでも、元気に産まれてくれれば何でもいい」 「……楽しみです」  俺の胸に顔を埋めたヘルムートを抱きしめ、最高の気分で目を閉じる。  その時が来るまで、俺もしっかりとした男にならないと。

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