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ビフォア・バースデイ・6
その夜、俺は不思議な夢を見た。
そこは動物たちの楽園で、豊かな緑と水に溢れ、優しい桃色の空に遠くの惑星が透けて見えていた。
水辺で歌う小鳥の親子。陽だまりの中で居眠りをする子ブタ達に、花畑を駆け回るウサギとリス。
ツタからツタへと移動するサルの群れ。まだ跳べない子供のカンガルーが母親の袋の中から顔を出し、大きな葉を這う青虫が虹色の蝶を見て笑い、湖ではゾウの兄弟が水浴びに夢中になっている。
俺はソーダ色の美しい海の底で、細かな気泡が下から上へと昇って行くのをいつまでも眺めていた。体は人間のそれではない。海中をゆったりと揺蕩いながら、俺は自分が大自然の一部になっていることへの喜びを感じていた。
遠くでクジラの歌が聞こえる。優しい星の光が次々と海の中に飛び込んできて、その泣けるほどの美しさに……繋いでいた誰かの手を強く握りしめた。
──ここにはね。
頭の中で声がする。
──愛しか存在しないんだ。
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