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雪虫 55

 ────その日から、午前に家を出て雪虫の家に行き、雪虫と喋りながらセキと勉強の日々が始まった。  と、言えば聞こえはいいが、勉強してこなかった二人が寄り集まったところで勉強が捗るわけでもなく。  何故だか二人で大掃除をしている。 「そっち持って」 「はーい、行くよー」  チェストを動かして後ろの埃を払い、なんてことない会話をしながら掃除に勤しんでいると、どうやら直江から連絡が行ったらしい大神に怒られた。 「   お前らは何をしているんだ」  電話の向こうだと言うのに、怒りの気配で背筋がゾクゾクする。 「すみません」 「ごめんなさい……」 「セキはともかく  」  依怙贔屓っ! 「  お前は俺に啖呵を切ったんじゃないのか」  ぐっと言葉が詰まるのは、オレが大神に出した提案だった。 「────捜索に加わる。だから、雪虫を外に出させてやってくれ!」  オレだけの話をするなら、さっさと鼻を焼いて雪虫に飛び付きたい の一択しかない。でも、雪虫がこれまで体験することができた色々なことを、出来ずにいると言うのが堪らなく嫌だった。  瀬能に指導してもらって、今度は日除けとかの準備を万端にしたら出かけられるに違い無い。  ──ただ、オレの言葉に、大神はいい顔をしなかった。  そこを食い下がって食い下がって、瀬能が助け舟を出してくれてなんとか頷いてもらった。 「ドア越しに会えるなら、慣らすことも可能かもねー」 「慣らす?」 「良くも悪くも人間って慣れる生き物だから。少しずつ君が雪虫の匂いに慣れて、雪虫も君が居ることに慣れて精神的に落ち着いて行けば体調も落ち着く、かも  ね」  妙な物言いだったけれど、瀬能の言い回しは今更だ。 「雪虫が落ち着いて、君が丁寧に雪虫に接することが出来るなら、番える可能性は出て来るよ。実際、君が来てから雪虫が体調を崩す頻度は減っていたからね」  同意を求められて、大神は渋々と言った顔で頷いた。 「兎にも角にも、君が暴走しないことが大前提。この前みたいに雪虫に怪我をさせるなんてもっての外!」 「怪我  ?怪我っ⁉︎」  どっと跳ね上がった心臓に押し出されてか、嫌な汗が流れる。 「あ の、怪我   て」  時折見せるひやりとした視線に見つめられて、息が止まりそうだ。 「思いっきり掴んだでしょ」  左肩をトントンと示されるも、記憶になかった。  例え言い訳だとしても、ただただ……あの時は自分を抑えるのが精一杯で…… 「ぅ   」 「大神くんですら!怪我させないように気を使っているのに!」 「余計なお世話ですよ」  イライラと煙草を吹かし、瀬能を睨むがやはり効果はない。 「怪我  具合は   」 「痛がってはないよ」 「    」  拳を作る。  オレは、体格的には恵まれてなくて……力がある方でもない。それでも、雪虫を傷つけたと言うのがショックで……

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