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落ち穂拾い的な 待遇
「とりあえず大神さんのスケジュールを把握するところからかな。スーツは今急ぎで作らせてるから、届き次第着替えてね」
「これ 」
直江から大神の一日のスケジュール一覧を渡されたが、何かおかしい……
「大神さんっていつ寝てるんですか?」
「合間合間に睡眠は取っているよ」
きゅうっと胸が苦しくなった。
「か 体壊すんじゃ 」
「そうならないように少しでも負担を軽くするのが俺と君の仕事だ」
「 」
けれど……と言おうとしたが、睨みつけられて言えなかった。
こく と頭が揺れて慌てて姿勢を正した。
大神に見られてやしないかと様子を窺うが、難しそうな書類を捲りながらパソコンを見詰めていて、気づかれていないようだとほっと胸を撫で下ろす が。
「 向こうで眠ってくるといい。俺に合わせる必要はない」
しっかり見られていた……
時計を確認すれば、そろそろお化けの出てもいい時間だ。
「 大神さんは?」
「気にするな」
そう言われても雑用係でも仕事中なのだから、放り出して一人眠るのも申し訳なさすぎる。
あかは小さく首を振って、コーヒーを淹れて来ますと立ち上がった。
「 厳しくするんじゃないんですか?」
カタカタカタ……と片手で器用に書類を捲りつつ、打ち込みもしている大神を見て直江は呆れたように言った。
仕事をしていないもう片方の腕には、ぐっすり眠り込んでいるあかが抱き締められている。
「仕方ないだろう。椅子で眠りこけるんだ」
「寝かしておけばいいんじゃないですか?」
「寝相が悪い。落ちかけた。危ないだろう」
「…………」
「ベッドの柵を用意します」と言ったら今度はどんな言い訳が返るのか、聞いてみたいと直江は思った。
END.
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