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ひざまずかせてキス 16

 あの人をもっとのびのびと、なんの柵もない状態にできる事が叶うなら、必要ならオレは命を投げ出す。  大神の自由には、それ程の価値がある。  オレが、β性の奴らに玩具にされ、性奴隷とされ、愛玩動物とされ、肉便器にされ、人として扱われなかったあの場所から連れ出してくれた人だから。  α、β、Ω の、ヒエラルキーがある。  支配階級のα。  一般人のβ。  被支配者階級のΩ。  発情して誰彼構わず股を開き孕むΩが被支配者階級なのは周知の事実で、Ωの地位は実生活の中では最下層だ。人権……なんてものもあるが、バース性に関する差別においてそれは役に立たないと言われている。  犯されたくて犯されたくて、発情して誘いまくるその性質に、世間の目は冷たい。  けれど、だからこそ、Ωを虐げるのは当然で……  膿んだ飽きと言うものは虐げるべき者を虐げる事を拒否し、自分達を支配するαの屈辱を望んだ。  αを跪かせる。  そのテーマの元に作られたそのβ性の人間の為の秘密のクラブには、洗脳しやすいαの子供達を各地から集め、セレブでありながらα性でない者達に一時の憂さ晴らしを提供していた。  『aristocrat』  そう呼ばれるクラブに、オレは何年飼われていたのか……  訪れた時は幼かったとは思う、オレの手を離す両親の瞳の中に後悔や憐憫と言った色は浮かんでいただろうか?  もう、両親を思い出そうとしても人型の影が揺れるだけなのだけれど……  αらしい気の強さをへし折られたのは割とすぐの事で、いっそのこと裸の方が恥ずかしくないんじゃなかろうかと言うような服を着せられて、ただただ俯いて暮らしていた。  肌の肌理や顔立ちが受けたせいか、『aristocrat』の中では比較的ましな客を相手にましな待遇ではあったけれど、体中を何人ものβ性達に蹂躙される日々は変わらなかった。  犬と呼ばれて這いつくばり、  猫と呼ばれて擦り寄った、  肉便器?  精子壺?  好きなように呼んでは、オレを手招いた。  だから、オレは相手の望むモノになって……毎日、潤滑油のぬめりと、汗のぬめりと、誰のものかわからない白濁の精液と……  青臭い精液の臭いと、β性達の香水の臭いと、  嬌声と  笑い声と 『あいつはアルファじゃあないぞ』  笑いも何も含まず、罵声と喘ぎ声を切り裂くようにすっとその声は耳に届いた。  次のお相手だよ と言われて、穴に潤滑油を注いでいる最中だった。  濃厚な催淫作用の匂いのせいかぼんやりとした思考でそちらに目をやる。  雰囲気を出す為と目隠しの為か、幾重にも垂れ下がったエキゾチックな薄布の向こうに大柄な男が見えた。  布越しでも分かる立派な体格に、反射的に恐怖を感じて首を振る。

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