246 / 665
ひざまずかせてキス 50
オレに向けて出すなんて初めてじゃなかったかと思い出しつつ、雰囲気で察した事を行う為に大神の真正面に歩み寄る。
「いや、お前でいい」
改めてそう言葉で指名されて、どきりと心臓が跳ねたのを気づかれなかっただろうか?
顔に出さないようにして躊躇いなく大神の足に触れる場所まで進み、
「後ろは準備していないので、口で構いませんか?」
こちらをじっと見上げる大神の瞳は揺れず、そこに動揺や欲望と言った物は一切見受けられなかった。
けれど、そうオレに告げたのは事実だ。
ひざまずいて口を開く。
大神の逸物がどこまで入るかと心配にもなったが、初めての試みだ、試してみない事には何も分からない。
「 失礼しま ────っ」
ぺちん と指の背で頬を叩かれ、驚いて大神を見上げると、少し髪を乱した大神が呆れた表情で下を向いていた。
「お前は、もっと俺に逆らう事を覚えろ」
逆らう?
「逆らう 時は、死にます」
咄嗟の事に思わずそう言葉が出た。
狼狽えて、ぺたんと床に座り込んで悪さを唆す大神の言葉を反芻した。
「手を噛むのは許さん。 ただ、逆らうのは構わない」
「裏切る事は、ないです」
ひざまずいたまま深く頭を垂れ、大神の足に唇を寄せて服従を示す。
後頭部に感じる視線は、満足そうなものだといいのだが……
「直江」
「はい」
ばさりと膝の傍に茶封筒が落とされる。
書きなぐられた表面の文字に、指先がすっと冷たくなる感覚がして、思わず大神を見上げた。
切れ長な、深淵を映すような、ナイフのような目が冷ややかにオレを見下ろしている。
「相良大我の、調査報告書だ」
ぎゅっと胃を掴まれた気がした。
END.
ともだちにシェアしよう!