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教えて!先生っ 4
おかしいよね?
水音がしてるのに隣で寝てるとかっ‼
「えっと……消えた二人と……楽しんじゃったの、かな?」
てへ と笑って見せるも、ヒタのアルカイックスマイルは消えない。
「どどど ど、どっちに噛まれたんだと思う?!」
「知らなーい」
ぴしっと額を弾かれてその痛みで突っ伏すると、長い溜息が頭の上で聞こえて……
「そんな事より、大丈夫なの?」
「何が?」
「何がって」
流石にアルカイックスマイルが消えて苦そうな表情だ。
「避妊とか」
……避妊⁉
は⁉
スツールを蹴り飛ばす勢いで立ち上がったせいか、ヒタはびっくりした顔をしていて、でも大きな音を立ててごめんとか謝る余裕がなかった。
避妊っ!
「ご ごめ オレ、病院行ってくる!」
真っ青になってそう言ったオレの態度ですべてを察したらしいヒタが手を振る。
「はぁい、また続報教えてね」
なんて軽い言葉で見送ってくれるけど、すぐに店内に戻って行かない所を見るとオレを心配してくれているのかもしれない。ちょっと離れた所で振り返ってみるとまだこちらを見てくれていて、小さく手を振ってから嘔吐下痢の時にお世話になった病院へと急いだ。
αとΩの発情期の完全コントロールを目標に掲げているつかたる市だけれど、本能に関係する事だからかどうなのか、やっぱり未だに完全コントロールと言うのは難しくて……
だからΩが受付で緊急避妊薬が欲しいと言えば優先的に診て貰えるシステムは、非常にありがたい。
待合も他の患者とは別で、人に会わないように極力気を遣ってくれる。
「 こんな風になってんだな」
知識として聞いたことはあったが、自ら体験するとそうすることの大事さが分かって……
改めて、自分の身に起きたことの大事さに鳩尾の辺りがぎゅっと痛んだ気がした。
「…………」
最優先で呼んでくれるはずだから、待ち時間なんてそんなにない筈なのにやけに長く感じて……一生懸命、ホテルの部屋にコンドームが落ちていなかったか思い出そうとするも、気が動転していたせいかそこは全く思い出せなかった。
ただ覚えているのは……
気持ち良さと、
横に眠る男の細いのに筋肉質な背中、
それから、やっぱりめちゃくちゃ気持ち良かった事……
あと、いい匂い
日向ぼっこしたような、ふわふわとした、温い匂い。
カラ と軽い音を立てて開いた扉に我に返ると、目が合った看護師が手招いてくれた。
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