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教えて!先生っ 15

 顔色に悪いのを理由に、またも虎徹先生に手伝ってもらって学校を早退した。  悪いことだとは思うけれど、一時間程度じゃ心は全然落ち着いてくれなくて、悩みを聞いてもらいたかったし、いっそ掘った穴でもいいから状況をしゃべってしまいたい気分だったからだ。  相手はー……一人しか思い浮かばない。 「ヒタさぁん」  まだ開店には早い時間ないせいか、ヒタ自身まだ私服だし店には電気も入ってないしで……  半眼でこちらを見詰めるヒタの表情をそのまま言葉にするなら、「ど迷惑」。  開店準備中にぐずぐず泣いている人間に飛びこんでこられたら、そりゃあ迷惑だろうけど、事態が事態なのでヒタの表情から読み取れる感情はまるっと無視した。 「あー……の   聞いていただけますでしょうか ?」  むっつりと曲げた唇をアルカイックスマイルに変え、ヒタは親指と人差し指で輪っかを作ってみせた。  「OK」って感じではない。  これはー金のマークだ!  はっとしたオレににんまりと笑うヒタは極悪人で。 「三回分ボトル入れてくれたら聞くけど?」 「〜〜〜っ‼︎オニ!アクマ!ヒトデナシ!」 「語彙力ないねぇ」  そう返すが、ヒタの指の輪っかが外れることがない。 「う う   うーーーっ三回分でいいけど、ヒタさんは顎髭剃って!」 「えっ」 「剃ってぇぇぇぇぇぇ」  なんでもいい、八つ当たりしたい気分だ。  それなら剃れ!剃ってしまえ!その似合わない顎髭! 「いや剃らないよ」 「なんでーっ三回分入れるんだから剃って!」 「えっちの時これでチクチクすると反応がイイから」  うふふ とやっぱり似合わない科を作って答えるヒタに反論する気力が湧かなくて……ボックス席の椅子の上にごろんと転がって溜め息を吐いた。  叫び出したいのをぐっと堪えて、代わりに足をばたばたと動かした。 「で?どうしたの?」  天井を見上げていたオレの視界にひょっこりと顔が入ってくる。  茶化しつつも隠しきれない心配そうな表情に、「あのね」と言葉が出た。 「    どうやら相手は生徒だったみたいなんだけど」 「…………」 「しかも双子の」 「…………」 「どうしたらいいと思う?」  薄暗い室内でも、あっと言う間にヒタの表情が変わる。 「うっわさいてー。生徒相手とかないわーっ」  半眼で睨まれて、居心地の悪さにさすがに起き上がって頭を掻いた。  まぁ、普通そうなるよね。 「ってか、通報案件?」 「うっ でもっバーに未成年ってことでバレたらそっちもやばいでしょ!」 「うちは別に禁止してないし。確か飲んでたのもノンアルコールだったから問題なし!」 「ううっ」  やっと起き上がったけどもう一度椅子に倒れ込んで天井を見上げた。

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