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教えて!先生っ 33
オレも同じ表情で何度も鏡を覗き込んだから、気持ちはよく分かる。
「匂いは?」
「それが 二人とも匂うみたいで 」
「 申し訳ないが、これは祖父案件にした方がはっきりするかもしれません。チャラくて軽く見えますが、バース医としては権威ですので何かわかるでしょう、どちらが番かは今は判断できかねます」
何気にディスりながら、瀬能は連絡しておきますねとパソコンに向き直る。
「絶対ないとは言い切れないけど、こんな前例あったかなぁ」
切れ長な目を細めて難しそうな顔をする瀬能に、二人がひょこひょこと手を挙げた。
「「せーの でつけたからじゃないですか?」」
「せーの?」と繰り返して、怪訝な顔がこちらを見た。
「……えっと、でも性交中に噛まないと番えませんよ?」
「だから、エッチの最中に」
「せーので噛んだんだって」
くるくると指先を彷徨わせながら言葉を探して、オブラートに包むことを諦めた瀬能が告げる。
「挿入……突っ込んだ状態でないと」
「「だからっ」」
咄嗟に二人が言い出そうとしたことに気が付いて急いでその口を手で押さえたが、背後で「あ゛ー……」と何かを察した瀬能の呻くような濁音が響く。
「……まぁ……発情中のオメガ性の方の体って柔らかくなりますからねー 」
と、ほぼ棒読みだ。
ぽちぽち とパソコンに何事かを打ち込んでから、「あ」とこちらを向く。
「お尻の薬出しときます?よく効くのありますけど」
「あっ いえっ あの、問題ないです 」
「そうですか、まぁヒートの時以外は避けた方が無難だと思われます」
「は はい」
揶揄われても辛いけどっ何事もなかったかのように流されて尻穴の心配までされるのはちょっとっ!
ちょーっと恥ずかしいっ!
「あとは、そうですね、妊娠検査の結果ですが 」
瀬能がそう切り出して、オレは自然と拳に力が入ったのが分かった。
「えっちってどれくらい禁止なの?」
「妊娠期間が七ヶ月でしょー?」
「産んだ後、体の回復を待ってだから、一年とちょっとくらい?」
「個人差って書いてあるからわっかんね」
「えっ じゃあヒートは?」
「それも個人差だって」
「触るくらいはいいんだろ?」
「いいんじゃない?俺は触る」
「俺も触るよ」
そう窓際でひそひそ話す二人を引き離し、無理矢理その間に割り込んだ。
「何を勝手言ってんだ!」
「シミュレーションだよ!」
「赤ちゃんできた時の!」
むぎゅむぎゅっと二人の間に挟まれて……気持ちがイイ。
「 はぁー……こっちはできてなくてほっとしてんのに」
『妊娠はされていませんね』
そう聞いた時の、安堵と 寂しさと、落胆と。
後ろの二人の残念そうな声に、何と返してやればよかったのか……
「俺たちは欲しかったよ?」
「せんせーとの子供」
二人に腹を撫でられて、何も思わないわけではないけれど。
「何言ってるんだ。お前らこれから受験だし、なんの準備もなしに親になんてなれるか!」
ぺちぺちと二人の手を叩いてやると、珍しく神妙な顔でこちらに向き直って手を握ってきた。
まだ柔らかいそれは大人のように苦労を知らなくて……
この二人自身がまだ子供だとオレに教える。
「それ は、軽率だったと思うよ」
「俺たちまだ子供だし、せんせーに苦労させるの分かるし」
それが分かっているだけ、この子達は真剣にオレとのことを考えてくれている証拠なんだろう。
「でもね、俺たちの人生ぜーんぶ使って」
「せんせーを幸せにしていくからね」
キラキラとした目がオレを映して、堪らなく幸せそうな自分の顔が見えて。
「 オレ、満たされてるな」
ぽつん とつい言葉を零すと、華やかな笑みがぱぁっと広がる。
「まだまだ!」
「溢れるくらいでないと!」
オレと同じ幸せそうな笑顔が二つ、言葉でなくても全身で好きだと言ってくれている。
正直、二人と番に なんてどうなるか分からない事柄だけれど、きっと幸せになることだけははっきりとわかった。
END.
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