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花占いのゆくえ 50
噛むのは、セックスは、運命に負けないことを証明して、それから なんて考えを思い出して、頭の中が花畑かよ……と胸中で毒づいた。
そんな馬鹿馬鹿しいセックスも知らない子供の頭で沸いた考えにこだわるから、薫に運命なんてものが出てくるだ!
「む ちゃ 言わないでっ」
ぐっぐっと腕が健気に抵抗するけど、それでもオレの手が緩む気配がないのを見て取って、薫は絶望をそのまま表すかのような苦し気な顔をして怯えて首を振った。
キスして、愛撫して、解して、奥の奥まで犯して……
何度でも出してやる。
そして──孕ませる。
「かおる、嫌な事しないから」
腕の力とは正反対の、優し気な声でそう言うと、一瞬だけ薫の表情が救われた人間のソレになった。
けれど、ブレザーの間に手を差し込んで、薄いシャツの上から小さな蕾をオレの指先が見つける頃には、ただただ絶望の色を濃くして怯えるだけだ。
「やめて 喜蝶っ 」
反発すればするほど、強い力で掴まれるんだとわかっていないのか、それともそれに気づくことができないほど怖がっているのか……
葉擦れの音が遠い。
熱い肌を辿ると心臓の脈打つ感触がしたけれど、それがオレのか薫のものかははっきりとしなかった。
「 おね が、いっ」
震える懇願なのに……いつもオレを見てくれる黒い瞳は熱を孕んで小さな光を灯している。
「きちょ っ止まってっ!」
嫌だ と、言葉が出たかわからない、ただただ山の空気の匂いに紛れて鼻をくすぐってくる薫の甘いバニラの匂いに目が回りそうだった。
邪魔な布を破り捨てたい気持ちで、焦れる指先で硬い尖りを引っ掻いてやると、「あっ」と甲高く声が上がって昏く落ち込んだ暗さの中でもはっきりわかるほどに薫の顔が赤くなる。
その可愛らしさに、少しだけ、凶暴な性欲が醒めた気がした。
「ぁ 、の、ひっかいちゃ ら……だめっ」
「どうして?弄らせてよ?」
「っ 乳首、とれちゃう……から……」
は と拍子抜けして肩から力が抜け、薫を傷つけてでも欲しいと思っていた荒々しい感情が凪いだ。
「……いやいや、取れないってば 」
いや、ずいぶん乱暴に弄ったから痛い思いをさせたのかもしれない。
一瞬でも頭が冷えてしまうと、急に耳に葉擦れの音と軋み続けるベンチの音が耳に届いて、なんて場所で薫に迫ろうとしていたんだと緩く首を振る。
「かおる 痛かった?」
その黒い瞳に、オレに対しての恐怖が刻まれていないか窺うように覗き込むと、オレの雰囲気の変化に気付いたのか、ぎくしゃくとして小さく首を振り返してくれた。
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