お父さんはやっぱり歯切れ悪く何か言っていたけれど、聞こえないふりをして廊下へ飛び出した……んだけど、自分の部屋は銀花が占領してるんだった…… 　試しに軽くノックしてみるけれど返事もなければ何か投げつけられるような気配もなくて、多分寝てしまっているんだと思う。 「寝るのはいいけど……ドア開くようにしておいてよぉぉぉ」 　びくともしないドアにすがって思わず崩れ落ちちゃったけど、もちろんそんなことで開いてくれるはずもなくて、仕方なくドアを背にして膝を抱えた。 「だから、一人部屋が欲しいって言ってたのに」 　と、今更ごちてもどうにもならない。 　ずっと一人部屋が欲しかったけれどお父さんは良いよって言わなくて……今思えば、銀花と仁達のストッパーとしてずっと一緒の部屋にされていたのかな？ 　三部屋あるんだから一人一部屋でもおかしくないし、そう言うことなんだろう。 　銀花が心配だから……？ 　銀花のことを考えて……？ 「　　っ」 　αの父と子が衝突しやすいって言うけど　さ、お父さんのオレの扱いってちょっと違うんじゃないかって思う。 　オレと向かい合うのを避けてるって言うか、遠慮しているって言うか、直視したくなさそうって言うと言いすぎだけど、銀花にするのと同じようには関わり合いたくないのかな？って思わせる態度を取ることがあって、いつもだましだまし、そんなことないよって、銀花はΩだしちょっとぽやっとしてるから手がかかってるだけだよって思いながら生活してたけど…… 　今回、急に帰って来たのも銀花のためだったからかな　とか、思っちゃうと今まで見なかったようにしていた事柄がふつふつと思い出されてくる。 　家に帰ってきた時、銀花を笑顔で抱き締めたりするけど、オレの時は一瞬ためらってから手を広げたりとか　する。別にオレだけ邪険に扱われるわけじゃないし、ネグレイトとかそう言うわけじゃないし、何か買う時は二人同じ物を買ってくれるし、行事も二人分きちんと参加してくれるけど…… 　なんか、お父さんはオレの扱いにちょっと困ってるのかなって、思う。 　銀花みたいに、無邪気じゃないから？ 　銀花みたいに、おっとりしてないから？ 　銀花みたいに、可愛くないから？ 　オレは、お父さんが仕事に家事にって頑張ってくれているのを知っているから、ちょっとでも役に立ちたいなぁとかって思って、せめてお父さんが仕事に行っている間くらいは家のこととか自分達のこととか頑張ろうと思うんだけど、そう言ったところが生意気だったのかな？