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お可愛いΩ お可哀想なα 38
至近距離にある銀花の長い睫毛に縁どられた瞳が、この時は明るい茶色じゃなくてビー玉みたいな青い色に見えるのも、不思議だ。
「りっかの目も青だよ」
ふふ と笑う。
心を読まれたような じゃなくて、実際に心が読まれてるんだ。
海に漂うような、温かで互いの鼓動だけが聞こえて……多分これは胎内の記憶で……
一つだった感覚が蘇る。
そうすると、ほろほろと怖かった思いが半分銀花の方へと移って行って……
代わりにオレは仁達と引き離された寂しさを半分受け取る。
それから、お互いがお互いに向けた言葉に頼らない謝罪を分かち合って……
お互いの鼓動から伝わる互いの記憶は雄弁で。
言葉に頼らないコミュニケーションが一般的でないのはわかっているけれど、オレ達の間では震える鼓動を読み解くのは言葉を探すよりも簡単だった。
ゆっくりとお互いの額を離すと名残惜しくて、叶うならばそのままずっといたいって思ってしまうくらい、気持ちいいと言うか……すべてが満たされて万能感がある。
もしかしたら、運命の相手を見つけたらこんな気持ちになれるんじゃないかなって、想像してしまう。
消えていくお互いの瞳の中の青い光を寂しく思いながら、目の縁に溜まった涙を拭っていると、玄関の方から鍵を開ける音が響いてくる。
家に入った時にお父さんはいなかったから、買い物にでも出ていたのかな?
リビングに来る前に って、言葉でもう一度銀花に謝っておきたかった。
「銀花、叩いてごめんね、でも、お父さんは本当に頑張ってくれているから。だからって、叩くのは違うよね」
「ぼくもごめん……りっかじゃなかったんだよね?お父さんにぼく達のこと言ったの……勘違いしてごめんね」
お互いの手をぎゅぎゅっと握り締めたタイミングで、大きな袋を抱えたお父さんがリビングのドアを開けて……オレ達の手を見て一瞬で涙を滲ませて抱き着いてくる。
どさどさって足元に買い物袋が落ちて、抱き締められた腕の苦しさに銀花と二人で目を白黒させて……
潰れそうだよね?潰れちゃうよね⁉って言葉を視線で交わす。
「「お父さん、おかえり」」
そう揃って言うと腕の力が更に強まって……身の危険を感じて来たから二人でもぞもぞ動くんだけれど、細くて儚い感じの外見に対して腕力はなかなかのもので、二人でぐぐぐ って力を込めてみるけど全然緩まってくれない。
これは観念するしかないのかな?ってあきらめかけたところに、グズグズと鼻をすする音がしてようやくオレ達は解放された。
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