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お可愛いΩ お可哀想なα 52

「お前らみたいなオメガがどうあがいたって俺達はお前らなんか眼中に入れない」 「な  」 「随分大きな声で話してたじゃないか、あれじゃあ俺達以外にも聞いた奴が大勢いるんじゃないか?」  シュンだけじゃなく、マモルと千鶴もはっと息を飲むのが聞こえて…… 「もっとセレブな だったか?自分がそれだけの価値があると信じているのか?そんな上等なオメガだと?」 「  っ」 「ああ、そうか、悪かったな?夢を見る権利は誰にだってあるんだったな?」  問いかけるようにして言葉を区切り、シュンの頭から爪先までを見下ろしてから「ふ 」と小さく笑いを漏らす。  見惚れてしまうような男らしい笑みなのに、そこに敵意が含まれると居た堪れないほどに毒々しく見える。 「夢くらいは見たいだろうが、自慰は自慰で済ませておかないと、人様に害を与えたら反撃されても文句は言えないよな?」 「え  そ、 六華く に、酷いことしようとか   」 「当たり前だろう?大前提の常識の話なんかしてないのは、わかるな?」  真っ青になったシュンがカタカタと震え出すのを見て、思わず体が動いて二人の間に割って入った。  とっさに抱き締めたシュンの体は、お風呂上りだって言うのにひんやりと血の気が引いてしまっていて、思わず腕に力を込める。 「六華」  仁の声は平坦で、いつものバカ犬な風は一切ない。 「どうしてお前が庇うんだ?」 「や やりすぎだ から」 「やりすぎかどうかはお前が決めることじゃあないし、俺は俺の身内にケンカを売った奴を許すほど寛容じゃあない」  頑固そうな顎がぎゅっと引き締められて…… 「オレ を、大事にしてくれるのはわかるけどっこう言うのは違うだろ!」 「  っ」 「こう言う小ズルイ奴は徹底的に潰しとかないと  」  続きを言おうとした仁の言葉が途絶えたのと同時に、ドン って胸に衝撃がきて思わず後ろに倒れ込んだ。 「────っ なんで同じオメガの君に庇われなきゃいけないんだっ‼」  したたかにお尻を打って呻いているオレを置いて、シュンは真っ赤になった顔で「最低っ」って怒鳴って寮を飛び出して行く。 「シュンっ!待ってっ!」  呼び止めたけれどオレの言葉は逆効果だったようで、シュンはオレ達を振り返りもせずに日が落ちて真っ暗になった外へと出て行ってしまった。  街灯はあっても敷地のすべてを照らすわけではなくて、暗い闇はあっと言う間にシュンを飲み込んでしまう。  それが何だか化け物の口の中に入っていくような錯覚に陥って……

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