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(8)うぶにもほどがある
さて、やっとのことで結ばれたユウジとタイチ。
俺のお陰、だけではないが、まぁ俺の活躍があっての事だと、ご理解頂けるのではないだろうか。
結果オーライ。
俺の頭越しでのキスだったわけだが、まぁ、めでたし、めでたしだったと思う。
しかし、唇を離した二人は、顔を真っ赤にしてバツが悪そうになった。
まぁ、それはそうだろう。
手もまともに握った事もないのに、雰囲気に飲まれて、告白からの一気にキスまでしてしまったのだから。
で、また二人は微妙な空気を作り出すのだが、俺は危険を感じていち早く脱出を試みた。
しかし、二人に行く手を阻まれてしまう。
「ミルクもキスしてほしそうだから、キスしないか?」
「はい。お兄様。ふふふ」
ユウジとタイチは俺に襲いかかる。
おいおい、冗談だよな!?
俺は恐れ慄き後ずさるが袋のネズミ。
簡単に捕まり二人に抑えられる。
「にゃー!」
助けてくれ!
俺はそう叫ぶが、二人の顔がじわりじわり近く。
しかも、二人とも楽しそうだ。
俺の両方のほっぺには、見事に二人の唇が合わさった。
チュッ!
そして、二人は微笑み合うと、チュッ、チュッと何度もキスをしてくる。
なんだよ。
結局、また俺をダシにしやがって!
俺はため息をつく。
はぁ、本当にしょうがないな。
このご主人達、うぶにもほどがあるだろ?
俺がいないと、まともにキスも出来ないのかよ。
俺は、嘆く。
そんな中、ユウジとタイチは俺をからかうように言った。
「なぁ、ミルク! お前、結構好きなんだろ? キス」
「本当に。最初は嫌だっていたのに、今は嬉しそう。クスッ」
ドキッ。
こいつらの鋭いツッコミに、俺は顔を赤くして小さくなった。
上目遣いで二人の顔を見つめる。
えっ? ミルク、お前も十分うぶだって?
ははは。
そりゃ、そうだろ?
こんなにうぶな飼い主の猫なんだぜ。そりゃ、うぶにもなるだろ?
俺は、幸せそうにひと鳴きした。
「にゃー!」
俺の鳴き声に、タイチとユウジが笑い出す。
「あはは」
3人の笑い声がいつまでも部屋を満たしていた。
*俺は猫だが、ご主人達がうぶ過ぎて困る 終わり
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