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08(side今日助)※

 恐ろしい咲が嫌いだ。  嫌いで、愛おしい。──愛してる。  だから、せめてほんの少し。  自分に懐く哀れな野良犬程度の情でも湧いてくれたらなぁ、って、夢を見てる。はは……馬鹿らしいよな。  俺は本気だぜ。  まぁ、そういうのを全部、いつも変わりなく、ビジネスライクな関係に収められてしまうんだけど。 「さき、ぃ、イきそ、ァ…アァ……っ、ぁ、イきそう……ごめん、手が気持ちくて、っア…ゥアっ……」 「はぁ? えー、うん、まぁいいよ?」  目先に見える絶頂に喉を逸らして喘ぎ、泡がつくのも構わず咲の肩口にグリグリ額を擦りつけねだった。  ヌチャッヌチャッと音をたてて扱かれながら穴を拡張する指が腫れた前立腺を乱暴に捏ねると、咲がそうしてるって、そんな状況も混ざってトリップしそうなくらい快楽に溺れたくなる。  体が官能をたくわえて脳がクラクラと目眩を起こす。イッパイイッパイだ。 「はぁっ…あっ…咲、ぁ、ふ……っ」  目の奥でバチッと星が散る。  血が沸騰するように熱い。  ビクビクッッ、と腰の根本からガチガチに勃起した肉棒の先端まで、甘い痺れと共に電流がかけめぐるような感覚だ。 「クッ、う…ッあ、ぁ……ッ! あッ…んんッ……ンッ……ンッ……」  目を閉じて、咲の指や手の感触を最大限染み込ませるように感覚を澄ます。  本当は俺が咲を気持ちよくさせなければならないのにやめられなかった。 「く、ぅっ……声が…ぁ、あっ……っダメだ、っ気持ちい、い、ひっ……っ」  浴室に反響する自分の喘ぎ声がたまらなく羞恥心を煽るから、声を耐えるために自分の唇に噛みつこうとするが、咲はそれを許さない。  暴力的な快楽に溺れさせようって。  抑えきれない声を搾取する。恥ずかしい声ばっかり出して。  俺の喉からあがるのは間違いなく低い男の声なのに、咲が擦って抉ると、トロけた音で浴室に反響するんだ。  ここじゃそれほど大きくはない声が大きく聞こえる。すすり泣くみたいな声。  咲の肩にグリグリと擦り寄りながら、独り言か囁いているのかわからない声量でヒンヒン鳴いて、濡れたももにぺったり乗る足を密かに揺すって腰を丸める。  涼やかな目元が僅かに濡れていくのが、心ごと興奮して、腹の奥からじゅわりと溢れ出すような気分になった。 「ゔあッ……ゃッ……ひッ……」 「ふ。綺麗にするために風呂に入ってんのに、お前の粗相でグチョグチョかよ」 「ん゛〜〜〜〜……ッ」  この手は残酷だ。  先っぽを弄りながらのたうちたくなる力加減で揉み擦る。  腫れたしこりを指先で挟んで、なするみたいに突き上げて、そして削り取るようにガリガリガリガリ襞ごと掻きむしる。  俺の感じるとこばっかり咲がぐちゃぐちゃに虐めるから。 「らぇあ、っだ、ダメ、イく、イく……っぁあ…っ俺イく、っもぉダメだ……っ」 「うん、ウケるわ。ははっ、いーよ、さっさとイけ。ちゃんと擦ってぶっ飛ばしてあげる……あ? ン」 「ン、ンン……──ッ!」  昂った快感が限界に達した瞬間。  目の前の薄い唇に吸いついてしゃぶり悦にまみれながら声を殺し、ビクッ、と大きく身体を痙攣させて強かに絶頂した。 「っふ、っ…! っ……っ……」  破裂しそうな肉棒が脈動し、ドプッドプンッ、と鈴口から白濁液が飛び散る。  重だるい腰がくねり、頭の先から足の先までブルッ……と身震い。脳を満ちる解放感と暴れたくなるような絶頂感。  ギュゥゥ、と収縮してうねる襞が咲の指を食い締めると、尻に力が入って余韻に喘いだ。 「……ん…はぁ……んん……」  肌を合わせながら空気の擦れるような声すら捧げるようにキスを堪能する。  咲は冷酷な目をすぅ、と穏やかに細めて、応えることもせず、俺の好きなようにさせてくれた。  キスが嫌いってわけでもないだろうにそういう性質があって、なんだろうな……咲はキスをされる(・・・)のが、あまり好きじゃないように思う。  触られるのはちっとも構わないのに、おかしな話だ。キスだけ。  すぐに応えて反撃をしたりする時は、する側にまわってキスの姿を変えているのかもしれない。  うん、まぁ、俺との関係じゃ客だから、あんまりおべっかは使ってくれないが。  どこまでも独りよがりな気がして、高まった欲を解放したことで少し冷静になった頭で自分を内心あざ笑った。

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