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始まり【第一部】

「じゃあね〜」 「うん。また明日〜」 そう言い友達は俺と反対方向に歩いて行く。 いつも通りの今日を終えて学校からの帰り道。 いつも通りに別れ道で友達に手を振り歩き出す。 ─ピコン スマートフォンが鳴りメッセージ受信を知らせる 『ごめんね!チョコプレート買い忘れたからスーパーに寄ってくれる?』 母からだ。チョコプレート.....?と一人で首を傾げる。 あぁ、バースデーケーキの上に乗せるやつか。て言うかここからスーパーって遠いじゃん。 学校帰りに今日の様に頼まれて何回か行ったことあるけど結構遠かった思い出がある。 これが父のバースデーケーキのチョコプレートだったら間違いなく無視して帰るだろうがそうはいかない。俺が頼まれたのは可愛い妹の誕生日ケーキに乗せるプレートだ。 歩きながら考える。どんなデザインのチョコプレートがあるのかな?やっぱり長方形?ハート形とか可愛いからあるといいな。 味はやっぱチョコしかないかな。あいつ苺好きだから苺味があったらそれを買おう。あ...ケーキの苺と別に苺買って帰ろうかな。昨日までテスト期間だったからプレゼント買えなかったし。『お兄ちゃんありがとう!』と言って満面の笑みを浮かべる妹を想像して温かい気持ちになる。 さて、そうと決まればササッと買って帰りますか〜。 「ありがとうございました〜」 やる気のない店員の挨拶に一応、気持ち程度にお辞儀をし、スーパーを出る。 暗くなってきたな。今何時だろ、と腕時計を見た。 18:30分か。今日8限あったからな.....。こっから大通りに出て帰ると遅くなる。仕方ない。気は乗らないけど近道するしかないか。 方向転換をし、キラキラ輝くネオン街に足を踏み入れる。 道の両側には際どい格好をしたお姉さんとキャッチのお兄さんがちらほら立っている。 なるべく下を向きながら早足で歩く。 ここで近道なんてせずにちゃんと大通りに出て帰っていれば、いつもと同じ、『いつも通りの今日』で終わるはずだったのに。

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