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「あ、父さん、近くのコンビニですか?」
腕の中で華がモゾモゾ顔を上げて聞いてくる。
ただ、それだけ。
好きとか可愛い事を言われたわけじゃない。
だけど何か、とても可愛いなと思った。
あるだろそういうの。ふとした時に『あー可愛い、大好き』ってなる瞬間。
それが今で、ずっと、もう一度言いたかった事が頭で止める暇もなく口から滑り出た。
「華、結婚しようか」
「……ぇ」
しまった、今言う事じゃない、と思うがもう言ってしまったから取り消せない。
華は俺を見上げたまま固まっている。
「…あ〜…」
「する!する!します!絶対する!」
指輪すら用意してない。華の部屋で抱き合って流れに任せ
たムードもクソもない格好悪いプロポーズ。
しかしその返事は見事了承。しかも華からキスまでしてもらえた。
「ん、…ふふ」
「…ふっ…ありがとう」
一度目は、お互いの事をよく知らない状態だったから大失敗した。
帰るって言われて実は結構ヘコんだし、それからたった三歳の差に悩んだりもした。
それからきちんと付き合えて、些細な癖や新たな表情を知って日に日に好きになった。
「ふふ」
涙目で頬を上気させながら何度も嬉しそうに微笑む姿が愛おしい。色素の薄い二つの瞳は、窓から入ってくる日差しを反射してキラキラ輝いている。
「もう一回、していい?」
「はい」
キス以上の事なんか何回もしているのに、さっきも自分からキスしてきたのに一瞬で耳まで真っ赤になった華。
普段はクールな顔しているのに不意に見せる照れた表情は可愛くてギャップが堪らない。
やっと、やっと俺のものにする事ができる。
ずっと俺が華を守っていこうと改めて決意し直す。
「華…愛してる」
「俺もっ!」
しかし、やっと繋がった想いがどこかで途絶える事になるなんて、この時は微塵も思いはしなかった。
【a pair of fate 第一部 完結】
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