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《LOVE》
アイツの声を聞くだけで
体の芯が震えた。
その声が
まるで肉体を通り抜けて
直接心臓を掴み
握り潰すかの様な
呼吸をするのも
苦しくて
ようやく息をついても
心拍数は上がったまま
過剰に押し流される血液のせいか
体温までが上昇し
吐き気を催した。
『 嫌 悪 』
だと思った。
そう
思っていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「これが俺のチカラなのか!?」
オカシな人体実験で
頭のナカを弄 り回されて
“不快”と“激痛”との引き換えに
ふいに手に入ったチカラ。
『実験施設』まで助けに来たと言う
アイツの顔を見た瞬間
最初に涌き上がった感情は
“友情”でも
“安堵”でもなく
『殺意』だった。
それが俺のナカで
ずっと眠っていた
眠らされていた
本当の
感情 。
あぁ
俺はずっと
思い違いをしていた。
痛いほどの苦しみも
熱いほどの高ぶりも
全てアイツへの憎しみだった。
俺はもぅずっと
アイツを殺してやりたかったのだ。
「金田ぁ‥‥」
名前を口にするだけで
血が滾 る。
俺のこの眼も
この手も
この足も
たった今備わった
このチカラも
この心ごと全部
全てが
金田を殺すために
存在するのだ。
そう
自覚した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「鉄雄ォォォ!!」
アイツが
俺を呼ぶ。
暴走するチカラを
止められる手段が
見つけられなかった。
『死ぬかもしれない』
と
思った。
「金‥田‥‥」
自分の声とは
思えない
呻きにも似た声を
喉から絞り出す。
「助‥けて‥‥」
薄れ行く意識の中
自分の命も惜しまず
飛び込んで来る
金田の姿が見えた。
俺はまた
過ちを犯したのか
最後の最後になって
その過ちに
気付くなんて・・・
俺はなんて
愚かだったのか・・・
かねだ・・・・・・
俺
は
~END~
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