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【確-TASHIKA-】

 “あの春”から  気付けば1年が過ぎていた。 「はッ はッ あ゛ッ」 「あ ン あはぁぁッ」 俺達は今、会う度にセックスをしている。 これじゃまるで身体が目当てみたいに見えて 自分で自分が嫌になる。 今日こそ 今日こそ我慢しようと、 昌志の顔を見るまでは、暗示のように、 何度も、何度も、自分に言い聞かせて行く。 のに。 「か~ずまッ」 ぴょん。て擬音が聞こえてきそうなほど、弾むように俺の前に上半身を傾げて、後ろから顔を覗き込んで来る昌志。 「ぅわッ」 驚いて仰け反る俺を後ろから支えられるのは、こうなる事を予測してなのか、持ち前の反射神経か。 俺より高身長の昌志に、俺の身体はすっぽり収まる。 そのまま抱きしめられると、背中で昌志の温もりを感じた。 「びっくりした?」 耳元で笑う吐息と、意地悪な声。 「ふふ。  やられた」 笑いながら、抱きしめる腕を指先でなぞる。 ヤラレタのは、心臓だけじゃなくて… なぞる先を、掌へ移動しそのまま握り締める。 顔を昌志の方へ向ければ、俺の声が最短で届く距離。 誰にも聞こえないボリュームで 「勃っちゃった」 囁けば 「ッッな」 みるみる赤くなる、首筋。 かぶりつきたい衝動を、目を逸らして抑える。 平日の昼間。小さな公園とはいえ、人目が無いとは限らない。 こんな風に抱きしめられている姿だって、本当なら誰にも見られない方が良いに決まってる。 いくら同性愛が認められ始めた時代だと言っても、 それでも生理的に受け入れられない人達が居るのもまた、現実だ。 こうやって抱き合うくらいなら、『男同士でふざけ合っている』程度の認識で済む。 これ以上は… そう思いを馳せていると、俺のムスコも落ち着きを取り戻してくれる。 「じゃ ぁ」 背中から、照れたような昌志の声 「オレん家   来る?」 ああもう。まただ。 こうしてまた今日も、俺の我慢の意思は、昌志の一言で簡単に飽和してしまう。 俺。意思弱いなぁぁぁぁ~~~~! * * * * * * * 「んッ んッ ああン」 自然に溢れる自分の声が、オンナノコみたいですごく恥ずかしい。 俺、こんな声出るんだ。 なんて、ハジメテの時はただただビックリしただけだったけど。 気持ちイイがダダ漏れてるみたいで 全部和真にバレバレみたいで、今は恥ずかしくて仕方ない。 けど。 「あんッ あ あッ」 気持ちイイんだから仕方が無い。 突かれる度に勝手に漏れるんだから、仕方が無い。 和真は 和真も、キモチ良さそうに声を漏らす。 一定のリズムで突いて、突く度に厭らしい音を立てながら、俺のナカを掻き回す。 和真のカリが、俺のイイトコロを引っ掻くもんだから、また声が漏れて… 「ああッん イ…い」 もう、頭が真っ白になって行く… 世界に、俺と和真しか居ないみたいだ。 「か ずま…ぁ」 名前を呼んだら 「昌 志 ィ」 俺の名前を呼んで、濃厚なキスをくれた。 どこもかしこも、どろどろの、ねちゃねちゃ。 溶けて一つになれたら良いのに。 そう思った瞬間。 「イ ク…ッ」 重なった口唇の間から、和真が呟いて 一層ペニスを奥まで突き刺して、身体を痙攣させる。直後、ナカに熱が注がれるのを感じると、俺もその熱に煽られて達してしまった。 体中ベトベトなのに、今より更に抱き合って、深いキスの続きをする。 和真が好き。大好き。 こんなに誰かを愛しいと思う日が来るなんて、 想像も出来なかった。 「昌志」 愛しい人に呼ばれる自分の名前も この世で一番良い名前なんじゃないかとか 勘違いしそうだ。 「愛してる…」 心臓が跳ねる。 「え」 夢中で絡めていた舌を解いて、和真の顔をマジマジと見てしまう。 「ッ」 真っ赤になって照れる和真を、初めて見た。 「マジ」 やばい。ちょっと放心状態だ。 「迷 惑…  だった?」 ああ、違う違う。 一瞬で顔面蒼白になる和真に、慌てて首を振って誤解を解こうと務める。 「まさか!」 頭が付いて行かなくて、それだけ言うのが精一杯なのがもどかしい。 「だって。男同士 だし  世の中にも きっと、親… とかにも。 認められ辛い だろう し」 それで? だから? ∑ベシッ!「いでぇ!」 両手で、和真の頬を思い切り叩くように挟んでやる。 「なんじゃソレ。 俺との関係は 誰かに認めて貰えなかったら 簡単に終わらせられる そんな程度の 関係だ て事?」 「いや そういう意味じゃ…」 分かってる。 そういう意味で言ったんじゃない事くらい だけど そんなちっぽけな事で ウジウジ悩んでる 和真に腹が立つ!!!! 「俺達は、もう十分に自立した大人じゃん!! 一挙手一投足全部が、自己責任だろ!!?? 誰が!どう言おうと! 俺達の人生は、俺達のモンじゃ ないのかよ―――!!!!!!」 ああスッキリした。 言いたいだけ言って、和真を開放してやる。 今度は和真が、放心状態だ。 「は い」 なんだか情けない返事をしてから みるみる赤くなっていく和真。 「ど した?」 むしろ心配になって顔を覗き込むと 「やっぱ昌志 最ッ高」 ちょっと涙目で、満面の笑顔の和真と出会えた。 「だろ?  惚れ直した?」 冗談で言ったのに 「直す以前に骨抜きにされてるっつーの」 言いながら抱きすくめられて そのまま4回戦突入。 俺からの『愛してる』は伝えそびれちゃったけど 今日はムカついたから、また今度に延期してやろうと思う。         ~fin~

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