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【キセキ】

5年前のクリスマス。 僕の大好きなケンタに 「だいすき」 が言いたくて。 サンタさんにお願いしたら “キセキ”が起きた。 猫だった僕はサンタの魔法で 人間の姿にしてもらえたんだ。 と、思ってた。 「みぃ太、みぃ太!」 ケンタが大きな声でみぃ太を呼びます。 「うん?」 呼ばれるままにケンタの方へ向かうと、 ケンタは少し背伸びをしてから、みぃ太の被っていた帽子をグッと強く引き下ろします。 「ッ!いたッ!」 ギュゥ。と音が聞こえるほど、帽子の中に窮屈そうに収まる『猫耳』 「ちょっと見えてたから。気を付けて」 そう。みぃ太に奇跡を起こしたサンタは “見習い”で。 不完全な奇跡は、みぃ太に『猫耳』と『しっぽ』を残して行ったのでした。 「うん。ありがとう。ケンタ」 ちゅ。 触れるだけのキスは、もう何千回、何万回も繰り返して来た事。 なのにすぐに赤くなるケンタが可愛いくて みぃ太はなんだかムズムズするのです。 「ほ、ほら!遅刻しちゃうから! もう行くよ!」 朝8時。 ケンタは会社に向かう時間。 みぃ太は建設現場に向かう時間。 人間で言うと22歳になっていたみぃ太は、 体も食欲も一人前‥‥以上。 ぐんぐん身長も伸びてケンタを見下ろすくらいに成長して、ご飯もおかわりして良く食べるから、ケンタの稼ぎだけでは生活が出来なくなっていました。 なのでみぃ太は耳としっぽを隠して、名前も“三田希夢(みたのぞむ)”なんて適当な偽名を使って、建設現場で働く事にしました。 おかげでますます筋肉質に、ますますたくましくなってしまったみぃ太が格好良くて、ケンタはドキドキが止まりません。 「困った‥‥」 電車の中で一人、視線を落としたままため息を吐くように呟きます。 触れるだけのキスをしただけなのに。 余韻が消えないのはいつもの事なのに。 キスなんて何万回もしてるのに。 そろそろ限界。 心臓が保たない。壊れそう。 破裂した心臓からはきっとギュゥギュゥに詰まっていた「みぃ太」と「だいすき」が溢れてしまう。 そうしたらみぃ太にも、僕がどれだけ大好きか、伝わるのかもしれないね。 そんな事を考えながら、ケンタは今日も憂鬱(ゆううつ)な仕事に就くのでした。 夕方。 仕事を終えたみぃ太は、想定外の問題に巻き込まれたりしないよう、真っ直ぐ家に帰ります。 「ただいまぁ‥‥」 誰も居ない部屋。 みぃ太はこの時間が、一番嫌いでした。 一人になると、仔猫の時の記憶が蘇ってしまうからです。 一人ぼっちで「ミャーミャー」鳴いて。 でも誰も振り返ってもくれません。 気付いて暖かな手を差し伸べてくれてる人間が居ても、すぐにその温もりは無くなって、冷たい背中を向けるのです。 鳴いて、泣いて、ないて。 声が枯れてしまうかと思った所に、謙太がやって来て、ちっちゃい体を拾い上げてくれたのでした。 「謙太ぁ~」 返事なんて返らないと分かっているのに、名前を呼んでしまうのは何故なんだろう? 自分でも分からないまま、ふらふらとベッドルームに向かいます。 いつの間にか定まった、自分の場所。ではなく、そのすぐ隣の、いつも謙太が寝ている場所にうつ伏せて倒れ込むと、ほのかに謙太の匂いがします。 「謙太の匂いだぁ」 残り香に気付くと、まるで謙太本人にするみたいに、グリグリと枕に顔を擦り付け、深呼吸をします。 すると安心したのか、その姿勢のまま眠りに付いてしまったのでした。 「ただいま~」 数時間後、遅れて帰って来た謙太が、声を掛けます。 なのに今日はみぃ太の姿が見当たりません。 「みぃ太?居ないの?」 その事が珍しくて、家の中を探し回ります。 「あッ」 ベッドルームにみぃ太の姿を確認すると、ホッとしたのと同時にまた、あの胸のドキドキに襲われ始めます。 上手に呼吸が出来なくてすごく苦しいハズなのに、何故か目が離せません。 『そうだ。今ならじっくりみぃ太の顔が見れるかも。』 そう思い付いた謙太は、ゆっくりとみぃ太に近寄り、ベッドの端に指先をちょこんと乗せると、みぃ太の顔を覗き込みました。 朝は早めに起きて朝食とお弁当を作らないといけないし、夜も疲れてすぐに寝てしまうし、昼間も恥ずかしくて目を逸らしてしまっていたから、こんなにじっくりと顔を見るのは久しぶりです。 「いつの間にか、こんなに“男”になってたんだなぁ‥‥」 か細かった腕も逞しくなっていて、少年の頃の幼さはいつしか消え去り、柔らかそうにふっくらとしていた頬も、今では骨ばって健康そうな肌の色に変わっています。 「格好良く、なっちゃったなぁ‥‥」 ため息混じりの言葉は、残念そうで、嬉しそうで。やっぱり少し、戸惑いを含んでいました。 綺麗な白髪だった髪も、日焼けしているのか、いつの間にか赤みがかっています。 サラサラと流れるような髪が鼻先で揺れるから、綺麗な顔が隠れてしまっていて、つい指で掻き上げてしまったら、みぃ太が目を覚ましてしまったようです。 「、ん~」 俯せたまま大の字にグッと身体を伸ばすと、掌が謙太の肩に軽くぶつかってしまいました。 「ぁ」 思わずバランスを崩して倒れそうになったけれど、それより先にみぃ太が謙太の肩を捕まえていたので、助かりました。 でも。 目の前には、みぃ太の顔。 今度はバッチリ目を見開いて、謙太をまじまじと見ています。 「謙太だ。おかえりぃ」 ふにゃッと満面の笑顔を向けて、グィッと謙太をベッドの上に引き上げます。 「わゎッ」 すっかり力では叶わなくなった謙太は、軽々と引き上げられ、ごろんと仰向けに転がったみぃ太の体に覆いかぶさるように、すっぽり腕の中に収まってしまいました。 「へへッ」 ギュゥ。と抱き締められて、謙太の心臓は、口から出てしまいそうです。 顔を真っ赤にした熱も、そこだけでは間に合わず、全身に熱を伝えて行きます。 「謙太ぁ、だぁ~いすき」 言いながら自分の身体ごと謙太をゆりかごのように揺すって、目の前のおでこにキスをします。 好きすぎて、それだけじゃ物足りなくて、今度は上体を起こすように謙太の口唇を探して、そこに吸い付きました。 それでもなんだか、足りません。 謙太と自分との間にある隙間を、全部ぜぇーんぶ埋めたくて、ずっとずっとギュッてしてるのに。 謙太に『だいすき』が、全然伝わっていない気がして、みぃ太は少し寂しい顔をしました。 「謙太ぁ~」 どうして良いか分からなくて、助けを求めるように謙太の顔を覗き見ます。 「ッッッ!」 なのに謙太は、顔を真っ赤にして、目には涙をいっぱいに溜めていました。 「謙太!?どうしたの!?どこか痛くした!?」 少しキツく抱き締めてしまっただろうか? 苦しくさせてしまっただろうか? みぃ太も不安で涙を浮かべます。 「僕のせい?ゴメンね。ゴメンなさい‥‥」 今度は腕を緩めて、また昔みたいに涙を舐め取ってあげます。 「違うんだみぃ太。 僕の方こそ、ゴメンね?」 謙太は、自分の顔を舐めていたみぃ太の舌を、そのまま自分の口腔内に収めます。 そして自分の舌で舐めるように絡めると、少し強く吸い付きました。 「ン。んン‥‥」 触れるだけのキスはたくさんして来たけど、こんなキスは初めてです。 みぃ太はようやく、自分と謙太が混じり合うような感覚を得られた気がして、嬉しさに胸がゾクゾクしました。 溶けるようなキスは、マタタビに酔ったみたいに、みぃ太の身体をふわふわさせます。 謙太の唾液と、自分の唾液の混じる音が、今度は下半身をムズムズさせ始めました。 「みぃ太。」 口唇を離した謙太が、次に名前を呼んだ時にはすっかり鼻声で。 舐め切れなかった涙が、健太の頬を伝って零れ落ちて行きます。 「僕、もう無理だ。」 ボロボロ流れ落ちる雫は、舐めるくらいじゃ拭いきれそうもありません。 「みぃ太が好きすぎて。 もう、おかしくなっちゃったんだ。きっと。」 「大好きなのは、僕も同じ‥‥」 言いかけるみぃ太の言葉を最期まで聞かずに、健太はブンブン首を横に振ります。 「違う。みぃ太は綺麗だもの。 僕の“好き”は、汚い。 汚れてる僕を、嫌いにならないで?」 言ってる意味は分からなかったけれど、 『謙太を嫌いに』なんて。 「一生。ううん。死んだって、謙太を嫌いになんかなる訳無いよ。 だって、謙太のためなら、僕、死んでもかまわないもの」 本気で言ったのに、謙太は 「ダメ!!!!」 そう叫んでから悲痛な表情に歪んで、 「僕を置いて、居なくなったりしないで‥‥」 止まらない涙をボロボロぼろぼろ零して、しがみついて来る謙太が可愛くて、想いが一緒なのが嬉しくて、またギュッて抱き締めながら、みぃ太は顔中にキスを落とします。 「ゴメンね。居なくなんかならないから。 ずっと、一生、謙太の隣に居るからね。」 言いながら、頭を撫で撫で、してあげながら、沢山のキスをしてあげながら、謙太を慰めてあげていると、ようやく泣き止んでくれました。 謙太がそっと顔を上げて、みぃ太にやっと笑顔を見せてくれたから、みぃ太は覚えたばかりの深いキスを、謙太に捧げました。 謙太も溶けるような表情を見せるから、また下半身がズキズキし始めます。 「謙太ぁ、ちんちんが痛い」 痛みの原因を知りたくて言ったのに、謙太はまた首まで真っ赤にしながら、嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をして 「ぅ、うん。 じゃぁ、治してあげる」 と言って、みぃ太のベルトを外して、ズボンを脱がせて行きます。 トランクスの中で膨れ上がっていたソコは、人間になってから初めて見る一番の大きさで、さっきの謙太の言葉に不安が膨らんで行きます。 「僕、病気なの?」 不安を口に出したら、健太は少し吹き出しました。 「ううん。めちゃめちゃ正常。」 クスクス笑いながら、でもやっぱり恥ずかしそうにしながら、トランクスを器用に脱がして行きました。 そしてソコを優しく握ると、ゆっくりと撫で上げながら先端を舌先でちろちろと舐めました。 「ぅ。わぁ」 瞬間、みぃ太はビクリと腰を跳ね上げます。 初めての快感が、背筋を通って脳まで届く感覚に、ビックリした心とは別の所で、身体が勝手に反応したのでした。 気付けば、耳もしっぽもピンと立っています。 「大丈夫だよ、みぃ太。気持ち良くなるだけだから」 謙太が笑顔を見せるので、みぃ太も少し安心します。 でも、何をするのか知りたくて、そのまま謙太を眺めていたら、自分の上着を脱ぎ捨てて、自分のソコを一生懸命に口に含んで上下して行く、たまらなく艶やかで、いやらしい謙太の姿に、どんどん欲情して行きます。 含まれたソコも、更に膨らんで、謙太を苦しめているんじゃないか、心配で仕方ありません。 それでも謙太は、不思議と美味しそうにソコを舐め続けるので、心配も少しずつ無くなり、逆にどんどん全身が快楽に支配されて行くようでした。 「ん。あぁ、けン、たぁ」 耳に届く音は、いやらしい水音ばかりで、謙太の声が恋しくて仕方ないのに、快楽が邪魔をして、身体が言う事を利きません。 それでも謙太に触れたくて伸ばした手は、ようやく謙太の髪に触れます。 そこから頭皮に触れて、更に少し指を伸ばしたら、耳に触れる事が出来ました。 「けん。たァ、あぅッ」 謙太に触れられて安心した瞬間、謙太の口腔内へと(ほとばしり)りを吐き出してしまいます。 自分でもビックリする量を吐き出しているのに、謙太は構わず全部、ごくごくと飲み込んで行きました。 「けん、た‥‥ 大丈夫、なの?」 飲み切れなかった分が口の端から溢れているのに気付いて、それも舌舐めずりして口内へと収めながら 「おいしいよ、みぃ太」 そう言って微笑む謙太は、今まで見た事も無い表情をしていて、まるで自分の知らない謙太みたいで、ドキドキします。 そのせいか、みぃ太のソコはまだずっと固く、元気にそそり立ったままです。 「謙太ぁ。治らないよ~」 放出して、みぃ太は自分がどういう状況なのか、本能で理解しました。 大好きな謙太を、大好きになりすぎて、オス同士なのに欲情してしまっているのです。 その事はきっと“普通”じゃないから、やっぱり自分は『病気』なのかもしれないと、心の隅で思ったけれど、謙太のソコも同じように大きくなっているから、きっと謙太も自分と同じ気持ちなのだと嬉しくなったので『病気でもイイや』と、その事を考えるのは辞めました。 でも。オス同士で交尾なんて、人間の体で出来るもんなの? 自分のソコの大きさを見ると、謙太を壊してしまいそうでどうしても不安になります。 「みぃ太」 ぐるぐる考えていると、謙太がおしりをぐるりと向けて、みぃ太の顔を跨ぎます。 「みぃ太も、舐めて」 グッとソコを近付けるので、謙太がシてくれてたみたいに、口腔内に含みます。 「ン。あ」 謙太の声が、今まで聞いた事もなく厭らしく、艶かしく響きます。 『謙太も、気持ちイイんだ』 みぃ太は謙太を喜ばせてあげられている事が嬉しくて、少し吸っては、口唇でいっぱい扱いてあげました。 「ん。んン!ンぁん」 謙太も一生懸命みぃ太のをしゃぶってあげたいのですが、みぃ太の口唇が気持ち良すぎて、自分の喘ぎに邪魔されっぱなしです。 みぃ太もビクビク(うごめ)く腰つきに、また欲を(あお)られて、目眩(めまい)がしそうです。 「ジュゥ。チュ」 謙太のソコを強く吸うと 「あン!ィ。ッ、ちゃゥ」 堪らずみぃ太のソコから離した口から、最強にエロい声が漏れ聞こえ、同時にみい太の口腔内に熱い迸りが注ぎ込まれます。 『謙太、の‥‥』 そう思うだけで、全部自分の中に取り込みたくて、謙太がそうしたように、みぃ太も全部、飲み込んでしまいました。 『そうか、謙太も、こんな気持ちで、飲んでくれたんだね』 そう思うだけで、みぃ太は嬉しくて、胸が熱くなるのでした。 感動に浸っていると、目の前の小さな(つぼみ)が、(いや)らしくヒクヒクと蠢いています。 『オス同士だと、もしかしてココに挿れる事になるのかなぁ?』 小さな疑問と興味に逆らえず、謙太のソコから口を離すと、双丘を両手の親指で押し広げて、真ん中の可愛い蕾を舌先で突つきます。 「は!ンゃ!」 ビクンを大きく身体を震わせて、謙太がシーツに爪を立てました。 声は先ほどまでのと同じに、痛みより快感を伝えて来たので、“気持ち良かったんだ”とみぃ太を安心させます。 今度はその姿勢から、顔をシーツに押し付けるように上体を倒すので、やりやすくなったみぃ太は刺激を続ける事にしました。 「謙太。ココも、気持ちイイの?」 何も言わない謙太に問いかけてから、今度は周りを濡らすように舐めてから、キツイ入口から舌先を侵入させ、中を確かめるようにうねらせました。 「ん。クゥ。ふゥ、ンンッ」 謙太のくぐもった声は、明らかに快感を訴えていて、舌先で感じるソコも、物足りなそうにヒクヒク蠢めいています。 みぃ太自身も早くソコに挿入して、一つになりたい衝動に駆られていましたが、あまりにキツそうなソコに挿れるのにはまだ抵抗がありました。 「謙太、辛そう‥‥」 蕾の下の謙太のソレも、再び硬さを取り戻していて、パンパンになっています。 少しでも辛さを軽減させてあげたくて、みぃ太はまた謙太の下に潜り込むと、そそり立ったソコをまた口に咥え、ヒクついていた蕾には指を挿入して、掻き回すようにしたり、抜き差ししたりを繰り返し始めました。 「ゃ。あァン。み、ぃた、ダメ、それ、だハ、めェッ!」 前と後ろを同時に攻められて、謙太は全身を痙攣(えいれん)のようにブルブル震わせ、吐息や喘ぎだけでは逃がし切れない快感を、(よだれ)と涙も手伝って垂れ流して行きます。 「ヤぁ、も。む、り。おかし、く、なッッ、ちゃはぁン」 グチュグチュになった下半身を震わせて、みぃ太にまた吸い付かれて、健太は二度目の限界を迎えました。 気付けばずっと劣勢な謙太は、なんだか悔しくてなりません。 「みぃ太も。」 整わない息のまま話すので、言葉も途切れ途切れです。 それでも構わず、健太は向きを変えてみぃ太の鼻先へ自分の顔を近づけ、続けます。 「みぃ太も、気持ち良くなきゃ。ヤだ」 言うなりみぃ太へ深く口付けると、舌を絡め、吸い付きます。 「ゥ。んン‥‥」 蠢く舌に気を取られているうちに、謙太はみぃ太のソコを指先で掴み、自分の蕾へと押し当てます。 どちらもヌルヌルで、入口付近を右往左往していましたが、なんとか先端を差し込む事に成功しました。 「は。ァ」 ギュゥギュゥ。と締め付けるソコは、口唇では再現出来ないほどのキツさで、それでなくても謙太の言動で必要以上に煽られているのに、中は体温以上の熱さを(まと)っていて、触れた先から(とろ)けそうです。 思わず漏れた吐息は、謙太の心を満たすには十分で、謙太も口の端で満足そうに微笑みました。 しかしそれも束の間で、擦れる粘膜の快楽に襲われるとすぐに余裕を無くして、みぃ太にしがみ付いてしまいました。 「けん、たァ」 しがみつく謙太を抱き締めて、耳元で囁く声は、熱を帯びて厭らしく響き、謙太を更に煽って行きます。 「み、イ」 謙太はもう、何も考える事すら出来ません。 真っ白になった頭で、みぃ太の名前を呼ぶので精一杯でした。 謙太には自覚がありませんでしたが、その表情はみぃ太の本能を呼び覚ます引き金になってしまったようで、みぃ太ももう、湧き上がる欲情を共有したくて、貪るように夢中で謙太を何度も何度も貫き続けて行ったのでした。 深夜。 窓が「カタン」と鳴った気がして、目をさましたみぃ太は、そっと謙太の頭を腕枕から外して、音のした方へ向かいます。 見るとそこには、真っ赤な服を来たサンタが居ました。 そういえば今日はクリスマス。 仕事が忙しくてすっかり忘れていました。 「おぅ。」 慣れなれしい態度で片手を上げてあいさつするそのサンタは、ガッシリと体格が良く、若い青年のようです。 よく見るとその顔は、だいぶ大人っぽくなっていましたが、5年前のあのサンタでした。 「サンタさん!」 驚いて声を上げてから、慌てて口を手で覆います。 折角気持ち良く眠っている謙太を起こしたくありません。 「久しぶり」 ニカッと笑う男前は、謙太を起こしたくない理由を、もう一つ作り出しました。 「どうしたんですか? 僕もう子供じゃないし、お願い事もしていませんよ?」 ほんのり胸を“ジリ“と焼きながら、疑問をぶつけます。 「んー。 いや、実はさ、俺、正式にサンタになったんだよね」 嬉しそうに『ヘへ』と頭を一つ掻いて 「で、5年前の不完全な奇跡が俺の汚点だったから、それを消すために修正しに来たわけ。」 そう言ってみぃ太の頭にポンと手を置きます。 「修正、、って?」 全身が総毛立つような感覚に襲われるのは、『猫に戻される』と、咄嗟に思ってしまったから。 5年前もこうやって頭に手を置いてから、ほんの一瞬で人間にしてくれたから。 みぃ太は思わず、身体を仰け反り、その手を振り払いました。 「うん?」 サンタは驚いた顔をして、「あ」の形に口を開きました。 「ゴメンゴメン、説明不足だよな」 今度は弱った顔で笑いながら、言葉を続けます。 「修正って、君が今困ってるであろう、耳としっぽを消してあげる。って意味なんだ」 そう言ってツン、と方耳を突つくと、“シュッ”と頭の中に溶けるように吸い込まれ、猫耳は消えて行きました。 「ほ。本当!?」 猫耳のあった場所を、信じられない、と言った顔で何度も確認するように撫でます。 「うん。本当。 中途半端だった俺の、罪滅ぼし」 言ってまた、残ったほうの耳もツン、と突くと、また“シュッ”と無くなり、みぃ太の顔はもう、どこからどう見ても『普通の人間』です。 「ありがとう!ありがとう!」 みぃ太の目には、涙が溜まって行きます。 これで、コソコソ生きていかなくて良い。 謙太に、必要以上に神経を使わせなくて済む。 疲れさせなくて済む。 嬉しくて嬉しくて、みぃ太はギュゥと目を瞑ると、涙はぽろぽろと流れて行きました。 「喜ぶのはまだ早いでしょ。 はい。しっぽ出して」 サンタはニコニコ笑いながら、半分胸がムズムズくすぐったく思いながら、みぃ太のしっぽを手に取ると、最期の仕上げをしました。 すっかり人間の姿そのままになったみぃ太は、また昔みたいに嬉しい気持ちを押し殺して、謙太が起きてしまわないように“嬉しい”を我慢します。 「じゃ。俺はもう行くぜ。 子供たちが待ってる」 そう言ってサンタは、窓から出て行くと、5年前と同じように、トナカイの待つソリまで空を歩いて行きました。 「ありがとう!ありがとうサンタさん!」 窓から身を乗り出して、みぃ太は小声で御礼を叫んで、サンタが見えなくなるまで手を振り続けました。 そして、 今度は謙太のその隣で そっと謙太を起こさないように 元通りに腕枕をし直して 長い長い夜明けを じっと、謙太に寄り添って待つのでした。 今度はどんな顔で喜んでくれるのか 想像で胸を躍らせながら ~おしまい~

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