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第10話(スティーブ)
その緊急通信が入ったのは、そろそろマイクとの約束の時間というころだった。
「エージェントワイルド、緊急出動だ」
通信相手はWIA長官のスミスだった。
「WIAの機密情報を盗んだ分析官が逃走した」
スティーブは耳に常に付けてある通信機の赤いボタンを押す。
すぐに耳の小さな通信機が開き、ゴーグルの形をした液晶画面が出てくる。
そこに、詳細データが転送された。
機密情報を盗んだ分析官の名前は、王宇辰ワンユーチェン。
画面に映し出された中国系アメリカ人。
スティーブは見覚えがあった。
確か以前モニカの情報を調べて貰った分析官だ。
ワン分析官は、盗んだ情報を持って逃走中。
位置情報はワシントンにある本部から1kmの所で消失していたが、ワン分析官は逃走前にワシントンのWIA本部からニューヨーク支部へアクセスしていた。
「至急ニューヨーク支部へ向かってくれ。チームブラック全員招集してある」
「了解」
ワイルドはバイクに跨るとニューヨーク支部へ急いだ。
「初デートをすっぽかすなんて最低だな」
スティーブはマイクの連絡先を聞かなかった事を深く後悔した。
任務は最優先。
今までもこれからも。
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