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23 愛と友情(1) ~リュウジ~
アオイとはラブラブに過ごしていた、と思っていた。
それがつい最近、「ちょっと聞いてよ」とアオイがさり気なく言った一言で一転してしまった。
何故か、アオイは激怒した。
可愛いと言われて怒るなんて正直何が気に食わないにのか分からない。
今までだって普通に言っていたし、アオイだって嬉しそうにしていたじゃないか。
まぁ、でも、自分のいない所で噂話を立てられるのは腹が立つ。
きっと、そういう事なのだろう。
明日になれば、虫の居所も治るだろう。
俺はそうたかをくくっていた。
しかし、次の日も、またその次の日もアオイは怒っていた。
そして、一週間が過ぎた頃、怒りではなく明らかに元気を無くしていた。
俺は、「アオイ、元気出せよ」と言うのだが、「別に? オレは元気だ」と誰も近づかせないオーラを発していた。
オレは、そんなアオイを見ていられなくなった。
オレはカレンダーを見てある事を思いついた。
それはアオイの誕生日。
少し早いがプレゼントを渡す。
これだ、と。
で、何が良いか悩んだ末にたどり着いたのが、超どエロのコス。
ふふふ。
普通の下着は持っているだろうから、まず持ってないだろうと思われるベビードールとパンティのセット。
パンティは、布の面積が極小だから、あいつのだって顔を覗かせるに違いない。
アオイの事だ。
「まったく、お前はどエロだな。あはは」
と笑い飛ばしてくれるだろう。
そして、少しでも俺の事を思ってくれているのなら「仕方ない、着てやるよ」と笑いながら言ってくれる。
俺はそんなシーンを思い浮かべながら、ネットを巡り、高校生でも調達できる店を探し回ったのだった。
そして、プレゼントの当日。
俺は、アオイを呼び出してプレゼントを渡した。
「何だよ。リュウジ。オレ、誕生日まだだけど」
「良いから、開けて見ろよ! 元気でっから!」
アオイは、封を開けた。
俺は、ニヤニヤが止まらない。
最近はアオイの笑顔を見ていない。
だから、俺は癒されたくて飢えているのだ。
アオイが元気になってくれさえすれば、またあの純粋無垢な笑顔が見られる。
きっと明日からは元通りの日々が待っている。
さぁ、アオイ。元気になってくれ!
俺がアオイの表情を見つめているとアオイは顔を曇らせた。
どエロのコスを広げて放心状態。
あれ?
一体どうしたんだ?
アオイは、下を向いたまま言った。
「なぁ、リュウジ。これってお前の気持ちか?」
低く凄みが効いた声。
怒っている?
俺は慌てて取り繕う。
「な、気に入らなかったか? もっと可愛い目が良かったか? ふあふあの?」
「お前の気持ちかって聞いている」
再度発せられるアオイの言葉に、オレはどうやらアオイを完全に怒らせてしまったと理解した。
でも、これは誤解だ。
アオイは確かに清楚なファッションが好みっていうのは普段の格好から分かる。
だから、嫌味だと受け取られてしまったのかも知れない。
ちょっと、タイミングが悪かったか?
俺は少し後悔した。
でも、こういった大人向けの色っぽいのだって似合うはずだし、是非着て欲しいのだ。
「気持ちって……そうだよ。冗談と受け取らないで欲しい。本気でお前に似合うと思っている。間違いなく、絶対に似合うと思うんだ」
俺は、本心を熱く伝えた。
「だから、着てみてくれないか?」
アオイはジッと俺の顔を見つめる。
目からツーっと涙が垂れた。
えっ!?
どうして?
俺は、急に泣き出したアオイに動揺した。
何故、泣くんだ?
泣くほどの理由が何処にある?
アオイの口元が微かに動いた。
「そうかよ……」
アオイは、一瞬、俺と目を合わせると、無言のまま背を向けた。
そして、歩き出す。
俺は、何も声を掛けられず、ただその後ろ姿を見送る事しか出来なかった。
俺は、その一瞬のアオイの表情が目に焼き付いて離れない。
それは、既に怒りの感情は消え失せ、ただただ悲しい、そんな弱々しく寂しげな表情。
今にも、消えてなくなりそうな、儚げな姿。
俺は、キューッと胸が締め付けられる切なさを感じていた。
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