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飼ってあげる 4
オレは千影と反対側の緋音さんの隣に座って、生ビールを注文する。緋音さんは最初の1杯は必ず生ビールだし、オレが注文するのが当たり前になってるから、緋音さんは何もしない。
オレは緋音さん用に料理を取り分けようと思い、千影と話している合間に小声で聞く。
「緋音さんお昼食べました?」
緋音さんはオレの言葉に反応して、ちらっと振り向く。ふわりと起きた風が、緋音さんの甘い香水を運んでくる。
もう本当に最高だな、って思った。
「そういえば・・・時間なくて食べてない」
「朝食べたっきりですか?」
「うん」
朝ご飯は昨日オレが作り置きしたサンドイッチと、レンジで温めればいい状態にしておいたオムレツを食べたようだ。昼間は仕事先で食べるつもりが、食べ損ねたようで、そのままこんな夜中になったらしい。
オレは溜息をつきながら、サラダやお刺身なんかの油っこくない料理だけをお皿に取る。
夜中に揚げ物食べたりすると胃もたれしたり腹痛起こしたりする人だから、絶対に食べさせない。
「はいどうぞ。ちゃんと噛んで下さいよ」
「わかってるよ」
いつもの癖でいつもの会話をする。
その途端(とたん)、千影が吹き出した。隣だから聞こえてしまう会話に、普段は反応しない気遣(きづか)いをする千影が、飲もうとしたビールを吹き出しそうになるほどの反応をした。
「ゲホッ・・・え、何それ?」
緋音さんは割り箸(はし)を割って、いただきますをしてから、サラダを食しつつ千影に説明する。
「いや、元々オレすごい早食いなんだけど、珀英がうるさくて・・・」
「当たり前でしょう。お腹弱いくせにあまり噛まないから、しょっちゅうお腹壊してたじゃないですか」
「う・・・だから今はちゃんと噛んでるだろ!」
「話さなくていいから、噛んで下さい」
「むぅ・・・」
緋音さんが若干むくれながら咀嚼(そしゃく)する。むくれてても可愛い緋音さんを、オレはビール飲みながら眺めて、千影は声を出さないように爆笑してて。
「あ・・・緋音さん・・・お刺身・・・タコは?」
千影が笑いながら、お腹押さえながら、残っているタコの刺身を指差す。
緋音さんはサーモンの刺身を口に入れたばかりなので喋(しゃべ)れず、オレが代わりに答えた。
「タコの刺身は嫌い。タコ焼きとか火が通ってれば食べれる」
「お・・・おぅ・・・」
千影が変な応答をして、お腹を抱えてテーブルに突っ伏した。何がそんなにおかしいのかわからず、緋音さんはビールを流し込みながら首を傾(かし)げていた。
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