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僕の初恋
「ごめんね、柚月さん」
「どうしたの、奏くん」
義兄の恋人である柚月さんには驚くことかもしれないけれど、僕は貴方のことが好きなんです。
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柚月さんは優しくて、聡明で、時々抜けていて、何故義兄と友達なのか不思議だった。
「たっくん、心配しなくても大丈夫だから」
「家まで送る」
「ありがとう」
家に遊びに来る度に仲の良い姿を見る羽目になりモヤモヤした。冷徹な兄が唯一心を許せる相手が常陸院柚月、常陸院家の長男だった。
家柄もよく品がある彼は、金持ちから目をつけられていることを知っている。そんな目線から守っているのが裏稼業もしている飛竜家だった。
飛竜家は長男の巧、次男の奏で跡目争いをしている。母が違い、妾の子である僕は義兄に劣等感を持つこともおかしくなかった。
どれだけ頑張っても成績優秀で眉目秀麗、運動神経も良ければ影になるのは明白だった。
初恋といってもいい柚月さんさえ、義兄に惹かれていて、歯がゆかった。
順当にいけば柚月さんは兄のパートナーとなる筈だが、神様は試練を与えたのだ。
「常陸院家が騙されたのか」
「親戚にしてやられちゃって。もうたっくんとこうして会うことも難しいと思う。奏くんにはみっともない姿を見せちゃったな」
きっと義兄は柚月のことなら常陸院家の復興に手を貸すだろうし、パートナーになればと思うだろう。しかし、父が許す筈ないから叶わないことだとすぐ打ち消す。
「最後に挨拶しようと思ったんだけど行き違いになっちゃうなんて、ついてないなあ」
泣きそうな柚月さんに何も言わなかった。もうすぐ帰ってくるだろうから家で待っていればいいなんて言ってあげなかった。
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没落した後、柚月さんは鷲崎家に買われたと噂がたった。義兄をライバル視していたが一度も勝てず、腹いせの意味もあるだろう。既に義兄と肉体関係はあったから、きっとより苦しんでいると思う。
僕は鷲崎家の次男に取り入り、屋敷に招いてもらった。ビデオを見せてもらうためだ。
「もう無理、やだ、やだ、やめて、鷲崎くん!」
鷲崎家長男と柚月さんの初夜は獣のようだった。
「俺はアイツみたいに優しくねえからな。ほら、咥えろ」
「ん、んっ、んん」
綺麗な髪を掴まれ鷲崎の股間に押し付けられる柚月さんは苦しそうで、小さな口に太いモノは収まりきらず、奥まで突っ込まれていた。
「けほっ、はぁ、はぁ」
「休まず尻向けろ。アイツに教わらなかったのか?あ?」
「たっくんはこんな酷いことしない!いつだって優し」
平手打ちが柚月の白い肌に打たれ、押し倒される。足を持ち上げられ義兄しか受け入れたことのない穴へ無遠慮に入っていく。
「痛い、痛い、ああっ」
「すぐヨクなるから力を抜け」
「こんなことしたって」
言っては駄目だと思ったが、柚月さんは睨みながら発していた。
「たっくんには勝てないから。心は彼に預けてきたんだ。どんなことしたって意味なんてない!」
鷲崎は怒り何度も柚月さんのナカで射精した。顔を背ける柚月さんに無理矢理キスして、腰を打ちつける。
鷲崎の悪趣味な体位にも耐え、蹂躙されても口から漏れるのは嬌声と義兄の名前だった。
「柚月の奴、痛いのが好きでさ。泣きながらよがるんだよ。ローターとかたくさん入れて攻めてもイかないようにしたら苦しいって何度も言って暴れるんだ。手錠で繋いでるから何にも変わらないけどな」
下卑た笑いに怒りがこみ上げる一方で、地獄から解放して面倒みたら変わるかもしれないなんて期待する僕がいた。
その後も、数人の男達に抱かれる柚月さんは今まで以上に色っぽくて素敵だった。
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「奏くん」
「迎えにきました、柚月さん」
新しい会社を立ち上げて鷲崎家を追い込むことに成功した。それまで従順にして、柚月さんの痴態を画面越しに見ながら手に入った時のことを想像した。
「ありがとう。奏くんが助けてくれたって」
「でも結局お金で買ったみたいになってしまってすみません」
「そんなことないよ。久しぶりに外に出られるだけで嬉しいよ」
「柚月さん、泣かないでください」
屋敷にずっといたせいか痩せていて、筋肉もあの頃より弱っていた。それでも嬉しそうに笑う顔はあの頃のままで美しい。
「奏くんはもう会社も立ち上げて凄いな。あの、たっくんのことだけど」
「義兄さんは、その、結婚しました」
息を飲むのが分かる。
「そっか。そうだよね」
酷く傷ついた顔で、静かに泣いている。ハンカチを渡し、新居へ連れてきた。
「ここで生活しましょう。柚月さんが元気になるまで僕が面倒見ますから」
「ごめん、ごめんね」
柚月さんを支えながら密かに買った別荘へ案内する。義兄は今縁談や会社のことで大変だから、まだ隠し通せる筈だ。気付く前に済ませないと。
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「僕に出来ることあったら言ってね奏くん」
「料理めっちゃ美味しかったです。それに仕事も手伝ってもらいました」
家から出て働くのは難しいからと回復した後は簡単な仕事を頼んでいる。そして今夜は決めていたことがある。
「ごめんね、柚月さん」
「どうしたの、奏くん」
睡眠薬で眠っている柚月さんは起きそうにない。まさか僕に睡眠薬を入れられるなんて思っていないだろう。目隠しをして車まで運ぶ。
「諦めてよ義兄さん。柚月さんにはもう会えないんだから」
義兄は僕が柚月さんを匿っている場所を調べている。縁談を破談にし、父から会社を乗っ取るほどの執念は凄まじかった。
柚月さんのことを想って涙を流している姿も見た。どれだけ愛しているかを分かっていても、譲れない。
「柚月さんには僕がいる。義兄さんには渡さない」
どれだけ義兄さんが愛していても、鷲崎に好き勝手された柚月さんを抱けるのか?
僕は柚月さんが死なないように、抱かれた後の面倒だってみてきた。柔らかい肢体に触れば反応し、ナカを掻き出す時に喘いでしまうことも僕は知っている。目隠しされた柚月さんは僕にナカを触られイかされても知らないけれど、確かに僕の愛撫で柚月さんは気持ちよくなっていた。
「待て!奏!」
なんでだよ、義兄さん。
柚月さんを取り返しに今更来るなんて。
新しい家の場所すらバレていて、さすがだとも思っている。
「柚月をこっちに渡せ」
「嫌だ。僕が鷲崎から買った、助けたんだ」
「柚月はお前を好きじゃない」
「今の柚月さんを知らないのによく言えるな」
「知っている。鷲崎を締め上げた時に柚月がどんな酷い目にあったかもな。助けられず申し訳ないって思ってる。取り返す方法を探して」
「柚月さんは僕の!」
「奏くん」
車からふらつきながら柚月さんは降りた。すぐに支えにいく。
「奏くん、ありがとう。今まで僕の面倒みてくれて」
「柚月さん」
「鷲崎家に囚われてた時、消毒をしてくれてたの奏くんだって知ってたよ。手の大きさが一緒だったから」
「それだけで?」
「奏くん、隠し事下手だから。たっくんのことも服に香水の匂いついてたよ」
「そうか。全てお見通しか」
「ごめんなさい」
柚月さんの手が離れていく。
「奏、柚月を救ってくれて感謝する」
ああ、分かっていたさ。
柚月さんを抱きしめる義兄、胸に飛び込んで微笑む柚月さんの顔を見たら、ひくしかないじゃないか。
「さよなら、柚月さん」
さよなら、僕の初恋。
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