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09.あてられたのは(8)

(あ……あんな)  ジークは無意識に息を詰めた。人様のそんなところなど、見てはいけないと思うのに、そう思うほど目が離せなくなってしまう。  しかも、相手はどう見ても同性だ。ジークの知人にもそういう指向の者がいないわけではなかったが、それでもやはり大半は異性愛者で、実際、彼には|同性愛《それ》に対する免疫はないに等しかった。  にもかかわらず、気がつくと身体の奥底に、言い知れない欲求が生じ始めていた。知らずごくりと喉が鳴る。目端にじわりと熱が灯る。  勝手に心拍数が上がり、更には下腹部に妙な違和感まで覚えてきて――。 「……っ!」  ジークは努めて顔を背けると、焦ったように頭を振った。そんな自分があまりに信じ難くて――。 (なんか……身体がおかしい)  二人の姿を極力視界に入れないように注意しながら、逃げるようにベッドから距離を取る。  ひどい有様の着衣を最低限整えつつ、傍らに落ちていたストールを拾い上げると、それを片手で掻き抱くようにして、アトリエへと続く扉に急ぐ。 「……あ」  ドアノブを回し、転び出るように|アトリエ《中》へと踏み入る。見るともなしに視線を巡らせると、思わず小さく声が漏れた。  窓際に置かれた鳥籠の前に、見慣れない誰かが立っている。それは朱銀の長髪に黒いローブの男――アンリだった。

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