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オファー 3
「お前、もう少しゆったり話してみろ」
「急がせてるのはアンタじゃないですか!」
いいから早く来て下さいと、グイグイ車まで連れて行かれる。
殆ど連行だ。
「2時から雑誌の取材が入ってるって、僕言ってましたよねっ?」
「なんで取材なんか受けなきゃいけないんだ。俺は役者だぞ」
「役者は取材を受けることも仕事なんです!」
どうにも本業以外の仕事は気乗りがしない。
バラエティなんて真っ平だし、何故世間にいい顔をする必要があるのだ。
「はぁ…」
「溜息吐きたいのはこっちなんですけど!」
「うるさい。着いたら起こせ」
「寝ないで下さい!今からスケジュール確認しますから!」
うるさい声を聞き流しながら、ふと先程見た俳優を思い出す。
人を惹きつける、役を生かす芝居をする子だった。
珍しく興味を抱いた。
もし共演できることがあるなら、是非掛け合いをしてみたい。
「ちょっと聞いてます幸さん!」
「あ?」
「だからなんで凄むんですか!」
本当にうるさい。
さっさと用を済ませて、またドラマの続きを見よう。
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