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オファー 5

「ちょっと幸さん!いつも言ってるじゃないですか。コメントはもう少し優しくオブラートに包んで下さいって!」 「なんで取材中まで演技しなきゃならないんだ」 「好感度アップ。ファンが増える。人気は更に上昇!」 「興味ない」 今日の松尾は一段と騒がしいな。 撮影中は至って落ち着いているのに、他のことになるとコイツは酷くうるさくなる。 一度それを指摘したら、「演技中は真面目にやってくれてるからです!」と返された。 それはイコール他は真面目にやっていないと言いたいらしい。 失礼なやつだと思う。まぁ否定はしないが。 「あ、そういえば幸さん。仕事のオファーがありましたよ。春から始まる連続ドラマです」 サラッと告げられた報告。 松尾に顔を向けると、「いつもそのくらい興味を持ってもらえると嬉しいですけどね…」と愚痴をこぼされた。 「……なんだ、これは」 渡された台本を読み、第一声がそれだった。 しかしこれは仕方がないと思う。 なぜならこの物語は恋愛の方向性が少しおかしいことになっているのだ。 「なんで男と男が恋愛してる?色々と間違っていないかこれ」 どう見てもこれは一般的な恋愛模様とかけ離れている。 頭の中が疑問符で一杯になる俺に、松尾は軽い調子で返してきた。 「いやいや、今って結構そういった同性愛もの増えてきてますよ。まぁこんなに大々的にやろうってのも珍しいですけど」 松尾の反応に目を見張る。 何故そんなあっさりとしている? 普通おかしいだろ、これ。 それともおかしいのは俺の方なのか?

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