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ライバル出現?2

「今日俺が淹れる」 「じゃあおれは何かお菓子を…。えと、幸さんのくれたクッキーあったかな」 あぁ和む。 最近忙しくて来れてなかったから余計だ。 仕事中もハーブや菓子を店先などで見つけては、今度持って行ってやろうとかばかり考えていた。 気付けば頭の中には千里がいる。 同じ空間にいると鼓動がうるさくなる。 頑張って平然を装っているが、気をぬくと口元が緩みそうだ。 今日も千里は可愛い。 家では基本かけてる眼鏡とか、好き勝手にほわほわしてる髪の毛とか、堪らなく魅力的に見えてくる。 「なんか、すっかり恒例になってきましたよね」 「っ」 その声で我に返った。 少し遅れて、クッキーの入った箱を取り出している千里が呟いたのだと気づく。 俺はガスコンロの火をつけ、ふっと彼を見た。 笑ってはいたが、そこにはどこか寂寥の感が滲んでいるように思える。 「…嫌、なのか?」 「え?」 無意識に尋ねれば、弾かれたように千里がこちらを見上げた。 きょとんとした彼を無言で見つめると、慌てたように首をブンブン横に振られる。 「い、いやだなんて!幸さんとお喋りするの、楽しいです!」 「…ほんとか?」 「あたぼーです!」 「…あたぼー?」 今度は首を縦にブンブン振る千里。 いい加減眼鏡が吹き飛びそうだ。 まぁ、彼が楽しいと思ってくれているのならいいか。 先程の表情は気がかりだが、問い詰めるわけにもいかないだろう。 その時お湯が沸騰し始めたので、俺はガスコンロの火を消した。

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