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5 誰の番?

ランがその身を奪われるまさにその瞬間。 最後の甲高い悲鳴を上げたとき、部屋の外から何人もの人間の足音がしてきた。 「ラン! ラン!!!」 ドアが破壊される音がして、人々が一斉に飛び込んでくる。 メテオがクィートに飛びかかるより先に、ラグが獣のようなスピードで動き、クィートは文字通り首根っこを摑まれると、次の瞬間後ろの壁に向かい吹き飛んでいた。 ラグが息子のような少年の貞操を、兄より先に守った瞬間だった。 メテオはもはやランしか見えずに抱き寄せる。街中に入りここまで僅かなランの香りを追ってきたのはメテオだった。夕刻になり抑制剤の効き目が落ちていたのもあるが、宿の人々が香りに騒ぎ出す前から己の定めた番の香りを嗅ぎ分けられたのはやはり調香師だからだろうか。 「番を持たないアルファと、ベータでフェロモンの感受性の強いものは宿から一時避難するようにいえ。もうすぐここでヒートが起こるぞ」 そう言うとラグは吹き矢をとりだして、頭を押さえてうずくまるクィートの太腿目掛けて吹き矢を突き刺した。そして頭を打って朦朧としたクィートに、緑の部分が小さくなり、金色に先祖返りした目と牙を剥き唸るように告げた。 「抑制剤を打ったが、効き目がでるまでは少し辛いぞ。まあ痛い目をみるといい。俺たちの街でアルファは悪さできない仕組みだ。残念だったな」 そして年嵩の番持ちのアルファとともにクィートをズルズルと引きずって部屋を出ていく。 続いて入ってきたのはこの街でも一番格式高く美しい宿を切り盛りしている、オメガの美人女将だった。 しどけない格好で泣き震えるランのため、羽織っていた虹色のショールを投げつけてその柔肌を隠すとメテオに檄を飛ばす。 「やっぱりランくんだったのね! 食事運んでいった子がそうじゃないかって気がついて良かったわ。さあ、あたしが奢ってあげるから隣の部屋使って。まだ意識あるんでしょ?」 といいつつ、メテオの頭をぱしぱしと張る。この街の大人たちはみなこんな人ばかりだ。 「メテオ! しっかりしなさい! この街のみんなはあんたたちのことずっと見守ってきたんだからね! 初めての発情期は素敵な部屋がいいに決まってるのよ!」 ものすごい形相で迫るオメガの女将に、 ランのフェロモンに目眩がしていたメテオも正気に戻り、ランを人形のように抱えるとすごい勢いで走って隣の部屋に飛び込んだ。 やわらかな小さな明かりが一つだけ照らされ美しく整った寝室で、父の調香した香りとラン自身の香りが織り交ざりながら官能を高めていく。 「ラン、ラン…… ごめん」 メテオは腕の中に再び戻ってきたランを抱きしめ、しかし無理やり傷つけたくなくて最後の理性を振り絞り許しをこう。 「ラン、愛してる。俺の番になってくれ……」 ランは汗が伝うほどに熱くなった身体を更にメテオにぎゅっとすり寄らせてくる。 瞬間今までの香りは序の口であったというほどの強い芳香がランの全身から放たれる。 「ランも…… なりたい」 甘い甘い声で応えた。 意識が混濁してきたランは、これが本当は夢で、ヒートに巻き込まれてしまったメテオに後で責められるかもと頭のどこかではまだ思っていた。 そんな不安はメテオから本当に求められていると身体のほうが自然と開いていって、心に教えてくれた。 誰も教えてくれなくても、こうして運命の相手を受け入れるのだと本能が手ほどきをしてくれる。 二人で勢いよく柔らかな褥に倒れ込む。 ランはゆったりとした仕草で両腕を上に伸ばして、色っぽく伸びをするような仕草で裸体全部をメテオの前に晒した。 掴みあげても指が回るほど細い二の腕、真っ白でやわらかな身体にたち上がる桃色の乳首や、縦に切り込んだ形の良いへそ。 息をするたび上下する凹んだ腹に、か細い足に柔らかな太腿。間に立ち上がった小さな屹立。 いつもあどけなく微笑み、メテオを見上げていた瞳が、自分のすべてを見せつけるように妖艶に誘惑し、燃える朝日のような色に染まった目で誘うようにメテオを捕らえる。 徐々に理性よりも興奮のほうが勝ってくる。 半ばに開いた小さな唇にゆっくりと唇を押し当てると、おずおずと小さな舌を差し出してきた。 その仕草に、先程までの男の存在を否定しながら、メテオは徐々にキスに夢中になって唾液まで甘い弟の口内を愛撫した。 唇をはなすと小さく吐息を漏らし、ランは恥ずかしげに瞳をそらす。 こんなに小さな体をしたか弱いものなのに、一つ一つの仕草で信じられないくらいにメテオを惑わす、罪深い存在だ。 メテオは今すぐ暴きたい気持ちから、もはや抗うことはできなかった。 メテオはランから放たれるフェロモンに操られるように、白く滑らかな身体の、両手で掴めるほど細い腰から胸元を捏ねるように撫ぜた。 ランが大きくなってからここまで遠慮なく触れたのは初めてだった。どこを触ってもなめらかで触るたびに心地よさが身体を貫く。 小さな胸飾りをざりざりと舌の表面でこ削ぐようになめると、ランは小さく腰を浮かせながら身悶えた。 「ああっんっ……」 小さな唇から赤い舌をだして艶めかしい声をあげる。日頃の幼げな姿からは程遠い、圧倒的に淫らな姿を晒し、先程まで他の男に組敷かれていたことに、憤怒に似た嫉妬の炎が燃え上がった。 「ラン、俺以外に触れらて…… こんなに淫れて…… 悪い子だな」 日頃の兄の声とは思えないほど低くかすれた雄を彷彿とさせる声色に、ゾクッとお腹のあたりに快感とも悪寒とも取れるような何かがはい登る。兄がこんなにもランのことを想っていたとは。自分ばかりがずっと沢山好きだと思っていたランは嬉しさと少しの恐ろしさで胸がぎゅっと掴まれた心地だった。 「おにい…ちゃん、ごめんなさぃ」 赤い唇を震わせて果実のような瞳を潤ませながら許しをこう。いつもならば可愛い弟のこの言葉を聞いたらすぐさま許してしまっていただろう。 しかしメテオはまたも昏い独占欲から一番愛するものに意地悪を仕掛けてしまう。 「この、唇も、瞳も、オレのものなのに。あんな男を見つめて、触らせたのか?」 フェロモンが目に見えるならば、今はきっと陽炎のようにまとわりつく熱い影が見えるはずだ。それが炙るように番の官能を煽る。 メテオは大きな口元で舌なめずりしながら、震えるランを見下ろして嗤うと、ぎゅっとランの陰茎を握る。 ランが怯えた顔をしたことに興奮しつつ、蜜壺にも深く何本も指を差し入れてランのいいところを貪欲に探し始めた。 ランは目を見開いて小さな悲鳴を上げ続け、許しを乞いながらいやいやをするが、メテオは仕置きをするように許さない。指が温む隘路の中の僅かな突起に触れると戒めるほうの手を緩めずにせめ立てた。 過ぎる快楽の痛みに、何度も気をやりそうになりながら寸前で止められ、ランは兄の手によって弄ばれ追い込まれていく。 「いやぁ。ゆるしてぇ…… おにいちゃん、 やめて……」 メテオは琥珀色の瞳を眇めてそれをいなし、弄ぶ手を止めない。ランは兄の酷い行いに半狂乱のていで涙をこぼす。ラットを起こしているのかもしれないが、それよりも自分の中のより凶暴な本能が剥き出しにされているような心地がしていた。 「ランは昔から誰にでも優しい。誰にでも可愛がられる。誰にでもついていく、お前に沢山触れて愛したかったのに、俺がいつもどんな気持ちだったかわかるか?」 自分の腕の中で善がり狂うランは痛々しくも美しく、涙を浮かべた顔は愛らしさは損なわれない。 もう誰にも奪われずに思う存分その身を奪い尽くし愛せることに歓びを感じた。 「いつだって、お前を今日みたいに閉じ込めてしまいたかった」 亀頭をぐりぐりと撫で回し、溢れる露を更に塗り込むように、親指を動かす。 ランは腰をゆらして暴れるが、押さえつけて許さない。 「いやぁ。もうむり! いきたいっ!はなして!」 昼間つけた首の傷をちろちろと舐めると更に善がって、戒めた指を解かれずとも後ろの刺激だけでいってしまった。 ビクビクと小さな身体が痙攣し、きゅうきゅうと弄ぶ指を飲み込み誘う。 口を小さく開けて目を閉じたランの唇を、きせずしてクィートがしたように唇を上から犯すようにして舐め、深く舌を差し入れて大きな口では余るほどの小さな唇を食べるように慾る。溢れるよだれを舐めとりながら、耳につくほど間近で囁く。 「ランは誰の番なの?」 薄っすら開く瞳は涙でぼやけていたが、朦朧としながらも間違えずにちゃんと自らの番の名を呼ぶ。 「メテオのぉ……」 よくできましたとばかりに、メテオは口元に満足げな笑みを這わせ、下履きを寛げると、凶悪なまでの大きさで天を向き立ち上がる自らを取り出した。 ランのか細い腰を掴みあげ、脚を限界まで乱暴に開かせると、一気に蕩けてひくつく男オメガの膣を貫いた。 「あぅっっ」 混じり合うフェロモン香に、性器の滴らせる雫の青臭さ、動物由来の香料のようなむっとする香りに、花々のような芳香。 すべてが坩堝に混ぜられたような空間の中で、ぐちゃぐちゃとかき混ぜられる結合部から与えられる快感に、頭が真っ白になり星が飛び散りはぜていく。 小さな身体なのに、その筒の内は誂えたようにメテオの雄を飲み込み吸い付く。 強く強く穿つ間、両手首をあとがつくほど戒め摑まれ、揺さぶられるランは息も絶え絶えで兄から与えられる圧倒的な快感にただ翻弄され、きれぎれの悲鳴をあげている。 メテオの屹立は根本にアルファ特有の瘤が膨れ上がり、もはやすべてをランに注ぎ込むまでは何をしても抜けないほどだった。 その精をガツガツと注ぎ込まれる過ぎる刺激にもいちいち後肛はひくつき、搾り取るように何度もビクビクと収縮を繰り返していた。 「ラン…… 愛してる」 掠れた声で言いながら頭を横に倒させ項を目前に晒させ、細い頸に大きな大きな歯型を残した。 「あああっ! あうっ!」 ランは痛みにガクガクと震え、メテオの背中をめちゃくちゃに引っ掻くが、メテオは獲物にとどめを刺そうとする獣のように、これまでの思いをすべてぶつけ、長く強くランに噛み付いた。 ランが獅子に喰まれた獲物のように瞬間気を失い、茎からはとろとろと密をこぼし続けながらおとなしくなると、メテオはぺろぺろと口に見合った大きな舌で自身がつけたまだ血の流れる傷を、幾度も幾度も舐めとり続けた。   暴力的なほどの深い思いをぶつけられて、それでもランは赤く腫れた瞼を力なく閉じたまま、口元だけは僅かに微笑んでいた。 中挿を再開しずっと長く続く射精の間もランの膣と化した後肛を嫐る。 全身が火照り、汗が滴り落ちるのを感じ、メテオはシャツを剥ぎ取って寝台の下に脱ぎ落とした。 足を組み換え、繋がったままランをうつ伏せにして深く深く貫く。 噛み跡に舌を這わせて、周囲をもう一度甘噛みする。 そして奥を刺激し続けると降りてくる、オメガの子宮を狙ってぐっと押しつけるようにカリの高い先端を最奥にねじ込む。 「ひっぃ」 苦しげに目を見開き、高い悲鳴を漏らしてランの腰が小刻みに震え、中でいき続ける。 構わずがつがつと腰をふり、敏感な部分を時折狙っていたぶるようによがらせると、顔を無理矢理横に向かせ、口を塞ぐようにキスをして吐息さえも奪い尽くしてしまう。 「あぁ可愛い。ラン、気持ちいい? 孕むまで何回だって、毎日だってしような……」 揺さぶられながら涙を流すランを見つめながら、普通に愛したい気持ちと気が変になるほどの快楽を呼び起こしたい気持ちとが交錯し、メテオは番をすべてを喰らい尽くす勢いで子種を放ち続けた。

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