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第1話

 朝起きたら、チンコになっててさ。  ……いや、冗談じゃないから! 本当に本当なんだって!!  俺だって何言ってるか、自分でもわかんねーよ。  わかんねーけど、本当に知らねえ男のチンコになってたんだから、しょうがないだろ。  そんな笑ってないで、まぁ俺の話を聞いてくれ。    目が覚めたら、辺りがヤケに暗いことに気付いたんだよ。  まだ夜か? 今何時だろうってスマホの時計を確認しようとして……体が全く動かなかったんだ。  やけに強張る全身は、頭から毛布のようなものに覆われていて、言い知れぬ恐怖に襲われた俺は絶叫し……そうになったっていうのに、肝心の声が全然出なくて。  なんで? なんなんだ、一体!!  混乱と恐怖で全身から変な汗が吹き出てさ。  よくわかんないけど、とにかく状況を把握しないと、と考えた俺は偉い。  辺りは相変わらず暗いけど、なんだか全身を包み込む毛布らしきものを感じるんだ。  もしかして俺、監禁されてるのか? 変な薬使われて、そのせいで声まで出ないのか? ってどんどん不安が募っていくわけよ。  したら突然、体が大きく揺れたわけ。大地震とまごうばかりの途轍もない揺れと、のっしのっしと響く巨大な足音。  本当になんなんだ? 一体何が起きてるっていうんだ!?  俺の混乱、超マックス。  足音はしばらく続いたんだけど、しばらくしたらガチャってドアを開ける音がして。  頭の上でなんかゴソゴソやってんなーと思った次の瞬間、体を覆っていた毛布が取り払われて、突然光が差し込んできたんだよ。  そしたら目の前に便器が現れて。  は? 便器? なんで便器?  俺超混乱。  ワケわかんないどころの騒ぎじゃない。  アワアワしてたら巨大な何かが俺の体をギュッて抑えたんだわ。  なんだなんだ、って思ってたら体の奥がムズムズってして、何か得体の知れないものが込み上げて来く感覚がしてさ。  あっ、なんかもう我慢できない!! って思ったら。  ジョボジョボジョボジョボ。  頭の上からなんか吹き出すのと同時にすげぇ音が聞こえるわけ。全身に溢れる解放感。  それがスッと消えたと思ったら、今度は大きく揺す振られて。  ……まさか、って嫌な予感がしたんだ。  全身を包み込んでた布の感触。目の前に突如現れた便器。ジョボジョボっていう音と解放感。最後にフルフルと揺すられる感覚。  ここまで来たら、思い当たることは一つしかない。  いや、俺だって考えたくなかったんだって!  でももう答えは一個しかないだろ!?  俺の心を肯定するように、頭上から野太い男の声がするわけ。 「今日はいつもよりチンコがペタペタしてるな」  って。  俺をジロジロと観察しながら、全身を触ってくるんだよ。  はいチンコ確定ーーー!  てかなんでチンコ! よりによってチンコってなんでなんだよ!!  俺なんか悪いことしたか!?  あーもー死にたい!!  俺が絶望に打ち拉がれてるって言うのに、宿主(?)の男はニヤニヤ笑いながら「まぁちょうどいいか」とか言いやがんの。  何がちょうどいいだよ、チッキショーーー!!  って叫びたくても、やっぱり声は出ないじゃん。  そんなこんなで否応もなく、知らない男のチンコとしての一日が始まったってわけよ。 **********  チンコとしての生活は、とにかく不快。その一言に尽きるな。  宿主の男はボクサーブリーフ履いてるんだけどさ、それがとにかく窮屈なわけよ。しかも暑いし蒸れるしで最悪よ。  自宅や会社はいいんだけどさ、満員電車の中とか外歩いてるときはパンツの中も汗が滲むわけ。それがどんどん蓄積してって、だんだんと自分の体や陰毛から異臭が漂ってくるんだよ。もう絶望しかないね。  俺もボクサー派だけど、人間に戻れたら絶対トランクス派に宗旨替えしようと決意くらい、ほんと凄いから。  んでさ、その不快感から唯一解放されるのが、宿主がトイレに行くときだけなわけよ。  スラックスのファスナー開けて、不快極まりないパンツから出してもらえたときの感動ったら……!  まさに天国。例えるならアレだ。高尾山登りきって山頂で深呼吸したときと同じくらいの感動が味わえるわけよ。  いやマジなんだって。  お前も一回チンコになってみろよ。そうすれば俺の気持ちがわかるから。  まぁとにかく話を戻してだな、俺だって馬鹿じゃないわけよ。感動を味わってるだけじゃなく、一応宿主に 「おい、このちんこは元のお前のものじゃないんだよ! 気付いてくれ!!」  って訴えることも忘れない。でも宿主の野郎、全然気付いてくれねーんだよ!!  しかもシッコの後、ちゃんと滴を振り切らないんだぜ!? 信じられるか? 男の風上にもおけないよな。  そんな状態だからさ、パンツの中は余計に臭くなってくんだよ。  ほんと絶望しかない。  そんな不快な時間を過ごすこと数時間後。  ようやく退社時間がやってきたんだよ。宿主はもちろんノー残業で帰宅するらしい。俺もう歓喜。  やっぱ時代はノー残業だよな。  もうとにかく帰ったらすぐシャワー浴びて欲しくてウズウズしたんだけどさ、宿主の野郎どっかに寄り道しやがったんだよ。  パンツとスラックス越しに聞こえる声の感じからして、どこかのバーかキャバっぽくてさ。  俺はもう怒ったね。腹が立ちすぎて体をブルブル震わせるしかなかったよ。  だけどさ、周囲の声とか会話を聞いて俺は愕然としたね。  宿主が立ち寄った店ってさ、ゲイバーだったらしいんだよ。  えっ、宿主ってソッチ? うわー、マジかーってなるじゃん!!  別に俺、ゲイとかLTBG? LBGT? なんだっけ?  あ、それそれ、LGBT!  さすが詳しいな。とにかくそういうのには偏見ないタイプなんだけどさ、でも自分がそういうのに巻き込まれるのはちょっとなぁ……俺女の子しか好きになれなかったわけだし。  宿主が突っ込む方か突っ込まれる方かはわかんないけどさ、どっちにしたって知らない男同士のセックスを見せられるのは本気で勘弁なわけよ。  嫌な予感しかしなくて、俺もう涙目。  でも宿主は誰かと絡むわけでもなく、一人で酒を飲んでるだけでさ。しかも誰かに声をかけられても断ってばっかで。  あれ、もしかして宿主、今日は酒を飲みに来ただけなのかな? って期待しちゃうじゃん。  だったらもう家帰ろうぜ。んで早いとこシャワーを浴びて俺をスッキリさせてくれ!! って訴えてたんだけどさ。  来ちゃったんだよ。相手が。  バーで待ち合わせしてたんだな。  俺撃沈。  もー、なんだよもー!  約束なんかすっぽかせよ!!  って怒っても、宿主にも相手にも気付かれるわけなんかないわけで。  二人はそのまま、どうでもいいような会話しながら、アルコールのおかわりを二杯三杯と増やしてくんだよ。  お前ら、そんなんどーでもいいから早く帰れよっ!! ってイライラしちゃってしょうがない。悪態付きまくり。  そしたら俺の祈りが通じたのか、宿主が「そろそろ行こうか」とか言い出したのよ。  よっしゃーいいぞ宿主! 今すぐ帰ってシャワーをっ、シャワーを浴びてくれぇっ!!  って喜んだんだけどさ。  今すぐすぐホテル行きたいとか言いやがるんだよ……。 「今日はもうチンコが昂ってて仕方ないんだ。早くお前の中に入りたい」  違う! これは昂りじゃなくて怒りのせいなんだっつーの!!  って叫んでも宿主には聞こえてないんだよ。  相手を連れて、結局ホテル入っちゃってさ。  何が行われるか、想像して震えることしかできない可哀想な俺。  部屋に着くなり頭上からクチュッとかジュルッとか怪しい水音がして。  ちゅーか。ディープなちゅーをしてるのか!  もういたたまれない。今すぐ逃げ出したい。でも俺チンコ。逃げられない。  絶望に身を縮こませて震える俺の耳に、カチャカチャって音が聞こえて、急に暑さが和らいだんだよ。宿主がスラックスを脱いだらしい。  数時間ぶりの涼しい外気はたしかに気持ちよかったけど、数時間前のような爽快さは皆無。  これから行われること考えたら仕方ないだろ。  そんでついにパンツがずり下げられて……目の前に髭づらの熊っぽい中年男が登場。 「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」  恐怖でジョッと汗が吹き出たね。  そんな俺に気付かない熊中年。 「あんま元気ないね」  とか心配そうな顔して言うわけよ。  したら宿主が 「そっか? さっきまですげぇ元気だったのに。お前と喋ってる最中うっかり勃ちかけたりして大変だったんだよ」  って言い出して。  いやだからそれは勃起じゃなくてイライラしてたせいで! 「酒飲み過ぎだかな。久々に会えて浮かれすぎた」 「もぉ、馬鹿……」  甘い空気が流れる。  俺、瀕死寸前。  そんな俺にさらに追い討ちをかけるように、熊中年が両手で俺を包み込んで、顔を寄せて思いきり臭いを吸い込むんだよ!  おいよせやめろ!  今の俺は最高に臭いんだ、こんな悪臭嗅ぐんじゃない!!  必死に叫ぶも、熊中年は恍惚の表情を浮かべて 「あー、臭い……蒸れたちんこと陰毛、最高」  人喰い熊みたいに貪欲な眼差しが俺に注がれて。 「お前、臭いの好きだろ。だから今日、便所行ってもシッコの滴をあまり振りすぎないようにしたから」  照れたような宿主の声。  そうか、俺はこいつらのせいで一日不快な気分を味わわされたのか!  怒りが再び込み上げてきたら自然と体が硬くなって。 「あっ、硬くなってきた!」  喜ぶ熊中年。  だからこれは違うんだって何度言ったらわかるんだっ! 「もっと硬くしてよ」  上擦った声で囁く宿主。無駄に色っぺぇ声出してんじゃねぇ。  おい熊中年、お前も舌舐めずりするな。  咥える気か。この流れは理解できる。だがな俺は咥えられたくないんだ。  頼む、それだけはやめてくれ、顔を近付けるな、いやだ、やめっ、あ゛あ゛ぁ゛ーーーーーーーっ!!  ここから先は、できれば言いたくない……。喋ったことで人間としてのナニカを失ってしまいそうな気がする。  えっ、ここまで話したんなら全部言えって? チンコだったときのことなんだから、人間の尊厳は守られるって? そんなもんか?  まぁ……喋ってもいいけどさ……ただ、あまりの衝撃に、あんまり詳しいことは覚えてないんだよ。  アルコールの臭いがする口で頭を咥えられたと思ったら、あっという間に全身スンナリ飲み込んで。  口ん中すっげぇ熱くてさ。ちょうどいい湯加減の温泉使ってる気分。  唾液いっぱい絡ませて、舌ベロベロ動かすとさ、ジュブジュブやらしい音がしてもぉ堪んねぇのなんのって。  頭激しく振って俺の全身擦り上げたり、たまにジュウジュウ吸い付いてくるし。  んでもってあれだ、上顎のボコボコしてるとこ擦り付けるみたいに動かされるとさ、全身蕩けそうなくらいに気持ちいいんだよ。  熊のフェラテクに、一瞬で全身性感帯になった。あれはヤバい。相当マズい。気ぃ抜いたら一発で持ってかれる。そんな感じ。  たださ、だからこそ逆にショックがデカすぎて。  もしもあのとき鏡が見れたら絶対レ○プ目になってた自信があるってのにさ。  今まで女一筋で生きてきた俺がだよ。男の、しかも熊みたいなオッサンに攻められて感じてるってさ!  もうほんと泣きたかったよ……。   心はこんななのに熊フェラのせいで、全身がすげぇ張り詰めて直立不動状態じゃん。ハタから見たら完勃ち。男の本能が恨めしい。  おれがこんな状態だから宿主も 「じゃあそろそろ……」  とか言ってコンドーム着け始めて。  全身をギュウギュウに締め付けられるわ、ゴム臭いわで、不快極まりない。  もう今すぐこれを取ってくれ! って訴えたけど、こいつらはヤる気まんまん。この流れで挿れないなんて百パーセントありえない。  だから俺も、覚悟を決めることにしたよ。もうこうなったら、誰にも止めらんねーじゃん。  唯一、生じゃなかったことだけが幸いだったかな……。  宿主が熊の足を開かせたら、ケツん中になんか挟まってんの。  それを宿主が抜いたらさ、ちっちぇえバイブみたいのがズルルって出てきて。あれでアナル拡張してたっぽい。  ずっと入ってたせいか、抜かれても穴が閉じないんだよ。  ポッカリ空いた穴の奥が、熟しきったトマトみたいに真っ赤に染まってて、ローションかなんかだと思うんだけど、トロォッて溢れてきてさ。  あまりのエロさに興奮した。チンコがあったら絶対勃ってた。って俺自身がチンコだから勃つものなんて付いてないんだけど。  でもそれぐらいエロすぎた。 「挿れるよ」  って言いながら宿主が俺を熊のケツに当てたんだ。  腹括ったせいか、このときにはもう嫌悪感とか恐怖は一切なかったな。  熊アナは俺の頭に吸い付いて、ヒクヒク動くんだよ。  俺が欲しくて堪んないのかって思うと、なんかこみ上げてくるものがあってさ。  宿主が俺をゆっくりナカへ侵入させるとさ、腸壁がギュッと絡みついてくんの。  気持ちいいってよりは、むしろ痛いくらいに全身を締め付けるアナが心地よすぎて、早く全身埋まりたいって思ったくらい。  とにかくもう、この熊のケツを味わい尽くしたくて必死なわけよ。  なのに宿主は全然一気に行かなくてさ!  熊の体を気にしてか、奥までゆっくり進んでくの。  もどかしい。焦ったくて仕方ない。  おいこら、ここまで来たなら一気に行け!! って叫ぶけどやっぱり俺の声は聞こえなくて以下略。  そんでも挿れ始めてしばらく経ったら、少しずつ腰に動きが早まって。 「あぁんっ……」  熊めっちゃ感じてる!!  俺で超感じまくってる!!  なんか不思議な感動を味わったわ。  熊のナカは火傷しそうなほど熱くて、俺の全身をマッサージしてるのかってくらいグネグネ動きまくって。  宿主がイイトコロを攻めると、ナカがギューーーって締まるんだよ。  俺、翻弄されっぱなし。  熊を相手に選んだ宿主に、心の中で喝采を送ったね。  まぁ、そんなこんなでセックスすること数十分。  熊の穴でグズグズに蕩かされた俺はもう、限界が近かった。  体の芯に甘い痺れみたいなのが走ってさ、ムズムズってなんかが迫り上がってくる感覚がするんだよ。  多分あれだな、射精感。  あぁ俺、見ず知らずの熊のケツでイくのか……そう思うとなんか感慨深くてなぁ……。 「あっ、イくっ!」  切羽詰まった宿主の声。 「んっぼくっ、もっ……あぁっ」  熊も同様らしい。俺もだー! と叫んでみたけど、俺の叫びはやっぱり二人に届かない。 「二人でっ、一緒に、イこぉっ」  熊の甘えた声に、俺の我慢はもう限界。  一瞬にして感情が昂って、一気に精液を迸らせたんだよ……。 **********  んで気付いたら、自分のベッドにいたんだよな。  なんだ夢か……夢に決まってるよなって安堵したんだけどさ。  でもそれにしては、あまりにもリアルな夢すぎて。  特にあの熊が齎してくれた快感と言ったら、とにかく筆舌に尽くし難くて……。  それでお前を呼んだってわけ。  なんで俺を呼ぶんだ? って、そりゃお前……そういう店とか詳しいんだろ?  いやいや、隠さなくていいから。  俺ずっと黙ってたんだけど、実は前にさ、お前が男とホテル入ってくの見かけたんだよ。  だから……え? いや、別に気持ち悪ぃとか思ってねぇよ?  俺が女に恋愛感情あるように、お前は男に恋愛感情持ってるってだけだろ?  人の趣味嗜好に文句言えるほど、俺は偉い人間じゃねぇし……って泣くなよ、おい。  それより今はさ、いいゲイバー知ってたら教えて欲しいなって。  いや、本気で行きたいんだよ。興味本位じゃない……とは言い切れないか。  ぶっちゃけるとだな、男とのセックスがあれだけ気持ちいいもんだなんて知らなかったんだよ。正直女とするよりよかった……気がする。  だから今度は誰かのチンコとしてじゃなくて、俺自身の体で経験してみたくて……。  えっ、いいとこ連れてってくれるって!?  マジか! ありがとな!!  うわー、なんか緊張してきた。俺こんな格好で大丈夫か? 着替えたほうがいい? そのままでいい、そっか、わかった。  じゃあ早速行こうぜ! ********** ちなみに“俺”はその後すぐにトランクス派に宗旨替えした。 チンコために。 “俺”が不思議な体験を打ち明けた男はずっと“俺”のことが好きで、でもノンケだし相手にしてもらえないだろう……と“俺”似の相手を選んでは摘み食いを繰り返していた。 だけど“俺”が男に目覚めたのなら遠慮は要らない。 連れて行ったゲイバーでしこたま飲ませて、前後不覚になったところをお持ち帰りする予定。

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