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第1話
最近は恋愛対象が男女だけじゃないってのも世間に知られるようになってきている。
そういう僕も例に漏れずだった。しかしいくら同性が好きと言っても僕の場合はハードルが高い。
何故って僕がいつも好きになる相手は年上だからだ。
最低でも十歳。もう少し年上でも全然大丈夫。
そんなオジサンと呼ばれる男と交わりたいとか思っちゃってるのが僕・徳間然(とくま-ぜん)、(29)なんです。
で、会社からの帰り道。僕はその人に出会った。
駅からマンションまでの道沿いにあるガソリンスタンド。そこの店員さん。
伸びた髪を後ろでまとめて、ウサギの尻尾にしているワイルドなおじさん。
年は五十前後かな……。
堀が深くてガタイが良くて、加えて声も良くてダンディーだった。しかしどうやって近づこうか。
僕には肝心の車もない。灯油を使う環境でもない。これは困った……と考えた。
考えて考えてここは一発投資で車を購入してみようと行動に出た。
中古の車を購入して、あの人のいるガソリンスタンドまで運転する。
緊張する。
「いらっしゃいませっ!」
元気のいい声がかかってあの人が走ってくる。
あーいい感じだ。まるで僕に、僕自身に駆け寄ってきてくれてるみたいで夢見心地になってしまった。
ここは今時珍しいセルフじゃないガソリンスタンドだった。
彼の顔が窓越しに近づいてきて「現金ですか? カードですか?」と聞かれる。
「ぁ、現金で……」
答える声が震えてしまった。
それほど嬉しかったと言うことで、僕は給油されている間、彼だけをずっと見つめてしまっていた。
怪しい奴だと思われただろうか……。だけどそれでも良かった。充実していた。
それから僕は無理やり遠出をしてガソリンを減らすとスタンドに行くと言う日々を送り、彼のフルネームと年齢を知る。山口至(やまぐち-いたる)、56歳。思っていた通り、十分許容範囲!
そして会社からの帰り道は意識してそこを通ると、彼を見つけては頭を下げ挨拶するようにもなっていた。その時も彼は素敵だった。
ちょっと小洒落たスーツを着込んだら、きっともっと格好よくなるに決まってる。
僕は徐々に彼が終わる時間を見計らってそこを通るようにして立ち話が出来ればラッキーなところまでこぎつけていた。
今日もそろそろかな……と思っていたら、今日は少し時間がズレてしまったらしい。
そこに彼の姿はなく足が止まる。
「 いない……」
最初はお休みなのかと思った。けど昨日そんなこと聞いてないし、たぶん彼なら教えてくれるはず。
どうしたんだろう……。
不安になっていると建物の影から私服姿の彼が現れて目が合ってしまった。
「ぁ……」
カッコイイ……。洗いざらしのシャツにストレートのジーンズとちょっと汚れたスニーカー。
誰が着ていてもこんなにカッコ良くはならないだろう。本当にそう思えるほど、彼はカッコ良かった。
そんな彼はこっちに片手をあげながら笑顔を作ると足早に寄ってきた。
「ぇ……なに?」
なになに? ちょっ……、変な勘違いするから止めて欲しい。でも嬉しい。そんな気持ちがMaxになった時、彼が目の前にいた。
「こんばんわ」
「ぁ…こ、んばんわ……」
「今日ちょっと話したいなと思って……」
「ぇ……」
「もしそちらの時間が許すなら……」
「大丈夫ですっ!」
「ぇ、いいの?」
「はいっ! いつも帰るだけですからっ!」
「ごめんね突然呼び止めて……」
「気にしてませんっ。あの、どこか入りますか?」
「そうだね。食事はした?」
「いえまだ」
「だったら今から何か食べに行こうよ」
「はいっ」
「何か食べたい物ある? 食べれない物とかあったら……」
どの程度の価格帯がいいのか全然分からなかったので結局お手軽なファミレスを選ぶ。
少し駅に帰った場所にあるファミレスが一番近かったので二、三分戻るとそこに落ち着いた。
案内されたテーブルに向かい合って座ると本当ににドキドキした。
「ここよく来るの?」
「あんまり来ませんけど、ここなら食べたい物がひとつはあるかなと思って」
「然君は優しいね」
「ぇ、そんなこと言われたことないですよ?」
「いや、いい子だと思うよ。こんなオジサンの話し相手になってくれて……」
「そんな……」
下心アリアリですよ、なんて口が裂けても言えやしない。
僕は俯きながらひたすらメニューを見つめてとりあえずドリアを頼んだ。
「じゃあ俺はピザでも頼むか」
ドリンクバーでそれぞれ飲み物を持って来ると頼んだ物が来るのを待つ。
僕の前にはメロンソーダ。そして彼の前には熱い珈琲が置かれてあった。
「あのっ……いつもお話していただいてとても嬉しいです」
「それを言うなら俺のほうだよ。いつも気にかけてくれてありがとう」
「今日はどうなさったんですか?」
「うん。ちょっと知らせしたいことがあって」
「ぇ、何ですか?」
それを聞くのがちょっと怖いような気もしたが、聞かなければ聞かないで気にかかる。
僕はちょっと身を乗り出して相手の話を聞こうと思った。
「いつもは取り留めもない話をしてるから突然こんなこと言われて迷惑かもしれないけど……」
「もしかして悪い話ですか?」
「そう思う?」
「いや、何か雰囲気が……」
「残念。そうじゃないよ」
「じゃあ何です? 」
「言ってなかったけど……俺、実は俳優なんだよね」
「えっ?!」
「あ、売れてないから知らなくても全然いいんだけど」
「はぁ」
「それで、今度映画の端役で出られることになったから、映画出来上がったら観て欲しいなとか思ったりしてね」
「本当ですか?」
「うん」
「じゃあガソスタの店員さんと言うのは」
世を忍ぶ仮の姿、とか!?
「ガソリンスタンドはバイトだから」
「ぁ、ああ。そうですよね」
てっきり正社員でガソリンスタンドにいるのかと思っていた僕は拍子抜けすると共に「俳優」と言う言葉にワクワクもしていた。
こんなにカッコイイんだから俳優なら俳優のほうが似合ってる。
役としてガソスタの店員とか、そんな風に考えてしまう僕はちょっとイかれてるなと思う。
「どんな役なんですか?」
「秘密」
「秘密? そこまで話して秘密ですか?」
「うん。悪いけど、なくなるかもしれないからね」
「だったら話さなくてもいいじゃないですか」
「でも、どうしても君には話しておきたかったんだ」
「それはどういう……」
「……良くしてくれるし……役も決まったから本職を教えたかったって言うかな……」
「僕はどうしたらいいですか?」
「いや、何もしなくていいよ。今までと同じように話し掛けてくれれば」
「……では僕も。白状してしまいたいことがあります」
「えっ? 何かあるの?!」
今度は相手のほうが驚いた顔をして身を寄せてきた。
どうしようか迷ったけど、やっぱりいつまでも言わないわけにはいかない。
「僕、あなたのこと好きでわざとあなたに近づきました」
「はっ?」
「初めて見た時からカッコ良くて一目で好きになりました。だからどうしてもお話したくて車を買ったりして……」
「えっ?」
「すみません。こんなこと言われたら嫌ですよね」
「あの……。好きってどんな?」
「最初はもちろん憧れもあったと思いますけど……、僕オジサンが好きなんです。だから至さんのこと抱きしめたいとか思っちゃうし、それ以上のこともしたいとか思っちゃってます」
「ぇ……」
「そんなの嫌ですよね。こんなに正直に話しちゃって、僕も案外馬鹿だなって今自分で思ってるところですっ」
だけどこの人には言いたかった。そんな思いで口走っていた。
彼は目を見開いて驚いてから「君って結構大胆なんだな……」と言われてしまった。
「すみません」
「いや、正直でいいよ。でも驚きだ」
そこで注文していた食事が来てふたりして食事を取る。続いてまた単品を何品か頼み、飲み物を飲んだ。
そこで酒も飲める場所に移動したほうがいいかな……とも思ったが、あんなことを口にしてしまった以上酔って云々となってしまっては大変だと諦めた。
「然君はお酒とか弱いほう?」
「いえ、普通に飲めるとは思いますが、それが何か?」
「じゃあ今からお祝いに飲みに行かないか?」
「ぇ……でも…………」
「さっきのこと?」
「ぁ、はい」
「気にしてないって言ったら嘘になるけど……どうやら俺も君のこと気にしてるって言うか……。ちょっと気になるんだよね。だから……将来は分からないけど、今君のこともっと知りたいと思ってる」
「それはあ……りがとうございます……。何と言っていいか…………」
単純に嬉しかった。
出来ればハグしたいくらいに。
だけど急速に近づくのは失敗が多い。だから僕は我慢に我慢を重ねて平静を装った。
●
「ぅ……ぅぅっ……ぅ…………」
「結構溜まってました?」
「ああまぁ……いつもひとりだったしな……」
そう言う至さんは今、僕に組み敷かれていた。
やっぱり酒は怖いよね。正直に言ってしまったせいか、酒がそうさせたのか、僕は彼を自宅に誘い、彼もそれに乗ってきた。
玄関のドアが閉まった瞬間、彼に抱き着いてキスしていた。
彼もそれを拒まなかったし、むしろ積極的だった。
「んっ……んっ……んっ…………。素敵だっ……」
「何が? 何に対して?」
「全てに対して。あなたの香り。肉体、声、この触り心地……。全て好きにですっ」
抱き着いて思い切り吸い込むように彼の匂いを嗅ぐ。
彼は大人の態度で余裕をかましていたのだが、欲情している匂いをムンムンさせていたので、これから先に進んでもまったく問題はないものと思えた。
「いいですか?」
「何を?」
「僕……あなたとしたいですっ」
「うんまぁ……。いいけど……俺はいったいどっちなんだ?」
「どっちがいいですか? 僕はまずして、それからされたいかな……」
「そうか……。でも俺はそっちの経験がないからな…………」
「絶対に気持ち良くさせますよ?」
「……だったらいいか。何事も経験だからな」
クスッと屈託なく笑われるともう我慢出来なくなっていた。
逃げられないように抱きしめて無理矢理靴を脱ぐとベッドへとなだれ込む。
勢いと言うのは怖いもので、ベッドに相手を押し倒すとすぐに下半身を脱がしにかかる。
彼は抵抗することもなく、むしろこれからどうなるのかを楽しんでいるようだった。
「キスしてから即座にモノ?」
「すみません。余裕なくて」
「いいよ。しゃぶっても」
「ありがとうございますっ」
目の前に見えたのはまばゆい下半身だった。半分勃起している彼のモノを握るとゆっくりとしごきだす。
「ふっ……ぅぅ……ぅ」
彼のモノは思ったり通り太くて硬くて長かった。
先端の大きさとか半端なかったし、先走りの汁もたっぷりと出ていた。
だから思わずむしゃぶりつきたい衝動に駆られたけど見てもいたかったから片手で袋を揉みながら片手でモノを扱いてそれを凝視していた。
廊下からの明かりだけでそれを見つめる自分にハッとして彼を見ると、彼は僕のそんな姿を目を細めて見つめていたのだった。
「女の子みたいにおしゃぶり出来る?」
言われてコクンッと頷くと彼の足の間に入って両手でモノを掴むと見せ付けるように口に含む。
最初は舌を這わせて、ペロリと舐めてからおしゃぶりを始める。
彼は僕のそんな姿を見て楽しんでいるようだった。
僕は僕で彼に見られてる、彼自身をしゃぶっていると思うとゾクゾクして股間が濡れた。
ほとんど四つん這いで彼のモノをひたすらしゃぶる。
口の中で彼のモノは凄く大きくなって大量の汁を流した。だからしゃぶりながら飲み干すのに苦労して顔をしかめる。
「もっとペロペロして」
「ふぁい……」
言われるままに口から彼を吐き出すと頭の部分をペロペロ舐めてみせる。
彼を見ながらおしゃぶりをすると自然に腰が揺れてしまう。
ああしたいっ。彼のモノを入れてみたいっ。満足したら入れてあげたいっ。
いつしか僕は彼のモノをしゃぶりながら自分のモノを揉んでいた。
彼のモノの先端を刺激するとより大きくなって体が疼く。
いつでもしゃぶっているともどかしいので口に含むと舌で転がしにかかる。
口をすぼめて上下に動かすと相手が「うっ」と低く呻いた。
それを聞いたらまた舌先に力が入る。レロレロと舌先で雁の部分を刺激するとドクッと脈打って彼が弾けた。
「ぅっ……! ぅ……」
ドクドクッと溢れ出る彼のモノを一滴も漏らすまいと必死になって飲み込む。
最近処理してなかったのかな……と思えるほど彼のモノは濃厚で苦しかった。だけどおいしい。彼のモノだと思うとおいしく感じた。
ああでももう我慢出来ない。入れたいし入れられたい。どっちを取ろうかと迷った末に、僕は彼に入れるほうを望んだ。
「ふぅぅ……」
安堵している彼を余所に、僕はやっぱり下半身だけ裸になると彼の前で股間にジェルを塗り付ける。
そして自分の中に男根バイブを入れ込むと出ないように専用のベルトで固定して彼の股の間に座り込んだ。
「あなたの中に入らせてください」
「それは? どういうこと?」
「我慢出来なかったので今回は偽物で我慢しますっ。でもこれ、リモコンで振動調整出来るのでどうぞ」
言いながらそれを彼に渡すと、彼の尻にジェルを塗り込む。
「うっ」
「冷たかったですか? すみません」
「君のモノ、思ったよりも立派だね」
「そうですか?」
「ああ。俺に入るかな…………」
「大丈夫ですよ。ジェルですんなり入りますから」
笑いながら塗り込んでいた指を引き抜く。そうしてから足を担ぐとモノをしごいて秘所に宛がう。
「力を抜いて」
「ぁ、ああ」
深呼吸するように彼が息を吐いたところに予告なく突入する。
「うっ……ぅぅ…………!」
一気に根本まで入れてから間髪入れずに抜き差しを開始すると、内部のへばり付く感触や熱さに心地良さを覚える。
「うっ……うっ……うっ……ぅぅ…………」
目を綴じながら彼を堪能しようと思ったら、途端にリモコンのスイッチを入れられて「あ、はぁ~んっ……!」なんて変な声をあげてしまった。
「はぁぁぁ~んっ……!」
僕が思わず突き上げてしまったせいで、今度は彼が素っ頓狂な声をあげた。
「やっ……ああっ……んっ!」
「んっ……! んっ……!」
突っ込まれて突き上げられたせいで彼がまた女々しい声をあげる。
彼のこんな声を聞けるのは僕くらいだろうと思うととてつもなく幸せだった。
それに加えてリモコンのスイッチで振動の種類を変えられて尻の中が痙攣するくらい感じてしまった。
ガンガン突き上げて尻の中の振動がMaxになりふたりして達する。
「こ……んな…………」
「すみません、抜きますっ」
「ぁっ……! ぁ…………」
射精した後すぐにモノを引き抜くと、何だか切ない声をあげられる。
上半身はそのままで、下半身だけ裸の男が絡み合う姿はハタから見ればヘンテコな図かもしれないが、僕たち的には全然大丈夫な状態で、僕としてはこれから先が問題だと思っていた。
「至さん、お願いですからリモコンのスイッチを……」
Maxやめてくださいっ。
いつまでもMaxで振動している尻の中の男根にまたまた感じてしまっている。
だけど彼はちょっとばかり放心状態ですぐには言うことを聞いてもらえなかった。
「至さんっ」
「ぁ、ごめんっ」
言われてようやくスイッチを切られる。
「ぁ、ぁ…………」
安堵の声をあげながらガクッと首を垂れると彼に抱き着く。
「こんな体験初めてだよ…………」
「そう……ですか…………」
それは良かった……。
目を閉じたまま口を緩めるとガシッと肩を抱かれて「入れたい」と囁かれた。
「ぇ…………?」
「今度は俺が君を鳴かせたい」
「ぁ、はい…………」
いいんですか状態で今度は僕が脚を開くと固定しているベルトを外してもらう。
ベルトを外すとニュルリと偽物の男根が尻から出てきて中が空洞になる。
「見ていい?」
「えっ? ぁ、はい…………」
何のことだかよく把握できないまま返事をしてしまい、後々恥ずかしさが倍増する。
彼は僕の脚を担ぎ上げると空洞になったソコに顔を近づけて指を差し込んだ。
「あっ! ぁぁっ……ぁ…………」
差し込んだ指二本を広げて内部を確かめるように覗かれると、舌を差し込まれて「ああんっ!」と声が裏返る。
「この尻、絞まりはいいのかな……」
「……」
「どう?」
「男を満足させるくらいには……」
「誰かに開発されてるんだ」
「自分でですよ」
「でも今までも男に突っ込まれて喜んだ口だろ?」
「……あなただって、そのイチ〇ツで女を喜ばせてきたんでしょ?」
「まあ否定はしないな」
「だったらお互い変な勘繰りはやめて快楽に溺れましょうよ。僕は、孕みませんよ?」
ふふふっ……と笑うとフゥッ! と中に息を吹き込まれてモノがヒクつく。
「いつも……こうやって後ろを慰めてるの?」
「ええ。最近はもっぱらあなたを思いながら」
「だったら今日は本物を入れてもいい?」
「すぐに回復出来るのなら」
「それは大丈夫。もうほらっ」
ねっ? と股間を突き示されてゴクンッと生唾を飲み込んだ。
さっき出したばかりだというのに、彼のモノはもうすっかりしっかり雄々しく勃起していた。
だから僕は自分の脚を広げて抱えると「入れてください」と懇願していた。
「あなたの生身のモノを……僕の中に入れてくださいっ」
「……」
彼がわざと「どうしようかな……」と言う仕草をするので、僕は必死になって尻を振り、またお願いしていた。
「あなたの汁を僕の中に注いで欲しいですっ」
「そうだね。いつまでも空っぽのままじゃ君の尻が寂しそうだ」
自分が満足するのではなく、僕を充実させるために彼が動く。
秘所にソレを宛がい躊躇なく突き進むのは僕と一緒だが、やっぱり思ったよりも彼のモノは長くて奥の奥まで届いて最高だった。
「あっ! あっ! あっ!」
「いいね。こういうのもっ……!」
「んっ……んんっ! んっ!」
それから絡み合って抱き着いて唇を重ねるとふたりしてぐったりと横になる。
「最高ですっ……!」
「ああ。これは……思った以上だ」
「……僕、至さんとお付き合いしたいですっ」
「俺、オヤジなんだけど?」
「言ったでしょ。僕オジサンが好きなんですっ」
言ったもん勝ちの動いたもん勝ち。僕は行動に起こして良かったと思っている。だってオジサンって案外押しに弱いんだよね。
嫌われてないってのを武器にここまで来たけど、至さんは超僕好みだからこれからが楽しみだったりする。
「……いいよ。俺でいいのなら」
「やったっ!」
抱き着いて頬ずりをすると改めてお互いの格好を見て苦笑する。
「上が台無しだね」
「ああ。そういえばシャツがくしゃくしゃだ……」
「洗う? 乾燥機かければすぐに乾くし」
「そうしようか」
「てかお風呂入りませんか?」
「そうだな」
着ていたものを洗濯しながら自分たちも風呂に入るとそこでも戯れて浴室から出る。
お互いの体を拭き合いながらまた抱き合って抱き着くとクイッと体を離された。
「えっ……?!」
「楽しみはちょっとづつだよ。最初にあまり欲張ってはいけない」
言われてニコッとされると素直に頷けた。
「今日は……帰る?」
「洋服が乾いたらね」
「明日また会える?」
「いつもみたいにね」
終わり
タイトル「忍び寄る夜の静寂に」20200804
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