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シティ

 この街の中央駅周辺はその顔を再開発によって徹底的にいじられた。今では立派にパーツは整っているのに歪なバランスの顔立ちをしている。現代技術の粋をこらした高層建築群には透き通ったガラスが並んだものが多い。  しかし中で行われていることの大半は整形手術前と変わらない。街の上っ面の一部をとりかえたところで、内面も空気も変わりはせず、相変わらず公害指標もよろしくない。  中央駅に降り立ち、虚飾を極めようと躍起になっているこのビル街をどの方向にいっても、そんなに経たない内に高架下をくぐることになり、その先に横たわる幹線道路を渡れば街並みには壁面が黒く煤けた古臭いコンクリートビルや木造の家々が混じりだす。明かりがつかなくなったまま放置された照明も。全て取り繕うには何もかも足りないのだ。  チサトの住居兼仕事場は中央駅から南方面に徒歩十五分、裏通りに立ち並ぶ高層マンション五階の一室にあった。南方面は交通網が整備されていないのでこの周辺の住民は遠距離移動の際は中央駅まで歩いている。  自転車やバイクが使えれば便利なのだが、盗難や破壊がしょっちゅう起こるので所有は割に合わない。それでもこの街で人を愛するよりはマシだが。    仕事の下調べを終えて帰宅したチサトは玄関に荷物を放り出すと真っ先に脱衣場に入り、着ているものを全て脱いでバスケットに放り込んだ。  シャワーを浴びた後も何も身につけず、全裸のまま寝室に入り、ベッドに身を投げ出して毛布を体に巻きつける。できるだけなにも考えないように。仕事終わりのルーチンワーク、いや、これも彼の仕事の一環。  ベッドに横たわり目を閉じるチサトの顔は四十路越えとは思えない若々しさが多分に漂っている。また伸ばし始めた黒髪が寝顔半分を、覆い隠す。毎夜、平穏を装う。愛するよりマシな気がして。

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