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【第1話】ランチ休憩に、蜜(6)
「ちがっ……」
フルフルと首を振る彼を、この至近距離から愛おし気に見つめる。
「違わないでしょ。有夏、俺のこと好き? あっ……ふふっ、凄い。今、有夏のナカ……俺の咥えて奥に引きずり込もうとしてる……」
「がっ、あ……うぅ」
必死に息を詰めて。
今、口を開けばはしたない嬌声が迸るであろうから。
「ね、自分で分からないの? こんなに……俺の、締め付けて……んっ!」
ゆっくりと腰を引いて、それから激しく奥を貫く──繰り返していた動きが、徐々にスピードを増していく。
「あっ、あっ……んあっ」
もうどちらの喘ぎ声か分からない。
互いの腰の動きと共にいやらしい音が大きくなる。
「んあぁっ、いく……せっ……」
先に有夏が崩れた。
全身をビクリと震わせて、白濁液を幾ヶ瀬の腹に撒き散らす。
「あ、有夏、そんな締めたらっ、俺っも……」
反射的に腰を引こうとした幾ヶ瀬だが、力の抜けた身体は言うことをきいてくれない。
ビクビクと腿の筋肉を引きつらせて、そのまま果てる。
荒い呼吸の下、何度も唇を合わせて。
ベッドと座卓の間の狭いスペースに重なって横たわる。
「はぁっ……駄目だ。有夏、起きて。昼ご飯」
「ひるぅ……?」
のろのろと起き上がった幾ヶ瀬が、置時計を見て慌て出す。
「ヤバイ! 俺、昼休憩終わる! 有夏、ごめん。食べといて」
「は? 幾ヶ瀬?」
急に覚醒した様子で、ズボンをずりあげながら玄関へ。
「幾ヶ瀬? ちょ……どうすんだよ、コレ」
ごめん、の一言で幾ヶ瀬は出て行った。
残された有夏はポカンと玄関の扉を見やる。
「って……台無しじゃねぇか。ほったらかしとか、アリかよ、こんな……」
吐き捨てるように呟く。
だって腹は精液でベトベト。
床も汚れているし、腰は痛い。
あげく鍋は冷めてるわ。
「何コレ、ヤリ逃げ?」
有夏はもう一度扉を睨む。
「クッソ」
今度はもっともっとってせがんで、絶対腰砕けにしてやる。
そう呟いて、冷えた鍋に箸を伸ばしたのだった。
「ランチ休憩に、蜜」【完】
2「アマゾンがくるまで」につづく
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