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【第8話】ヘンタイメガネの変態たる所以(9)

 フロアは結構広かった。  新しいだけに結構キレイだ。  受付の向こうに本棚がいくつもあって、更にその向こうに個室の扉がズラッと並んでいる。  横の階段を見上げると、更に多数の本棚が見えた。  どうやら上はオープンスペースになっているようだ。  大きな机と、それを取り囲むように椅子が並んでいるのが伺える。 「あの、すみません。人を探してるんですけど」  受付のお姉さんにコソッと聞いてやったってのに、ヘンタイメガネはエレベーター降りたところで仁王立ちしている。 「アーリカぁーーー!!」  絶叫しやがった。  何なんだ、コイツ。正気か!?  数人のスタッフが慌ててこっちに来て、しかし一定距離をおいて近付いてこない。  これは完全にアレだ。  不審者への対応だ。  ちなみにその不審者には、アタシも当然含まれてるわけで。 「あ、あの、違うんデス。ヒトヲサガシテ……」  言ってみたところで彼らがアタシを見る目は変わらない。  その時だ。  奥の個室の扉が少し開いたのが視野の端に入った。  騒ぎに驚いた利用者がそっと様子を伺っているに違いない。  そう思ってヘンタイメガネを宥めにかかったのだが、奴はアタシを突き飛ばして奥へダッシュした。 「あ痛っ!」  尻もちついたアタシ。  ヘンタイメガネの通り道にいたスタッフが、凄い身のこなしで飛びのくのが見える。  その瞬間に奥の個室の扉がバタンと閉まったのが分かった。 「有夏ぁぁっ!!」  ヘンタイメガネ、扉に取りすがる。  え、覗いてたのって有夏チャン?  まさかあの一瞬で分かったの?

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