259 / 364
【第23話】ここも、いいところ(バカップル攻さんの述懐)(4)
「こ、この上、有夏にスペシャルな要素が加わったりしたら大変だよ! 大統領になっちゃうかもしれないよ?」
「はぁ……?」
「いやだ、有夏が大統領になったらどうしよう」
「どうしようって、お前がどうしようだよ。大統領とか中世ヨーロッパとか、ほんと訳の分かんねぇ奴だな」
「大統領にならない?」
「ならないんじゃないかな」
「じゃあ、中世ヨーロッパにならない?」
「……ちょっと意味が分かんないかな」
呆れたような口調だが、意外と声は柔らかい。
腰に手を回すと有夏はクスクス笑い出した。
「人のことより自分のこと考えろよ。心霊系ユーチューバーになる夢はどこに行ったんだよ」
「そ、それは……」
人のことより自分のことを考えろ──そっくり返してやりたい言葉だが、幾ヶ瀬はぐっと飲みこむ。
窓から射しこむ弱い青の光の中で、有夏が穏やかに笑っているから。
「いいかんじの心霊トンネルを見つけたって言ってたじゃねぇか。あれは?」
「……トンネルはちょっと。怖すぎるかなと思って」
ともだちにシェアしよう!