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【第34話】夏だから…怖い話(13)

 腐女子の霊というのはどういうものだろう。  いや、この女は隣りに住むクソビッチだ。  有夏を狙って(?)しばしばお菓子を貢ぎにやってくる浅ましい女である。  一度掃除を手伝わせたことがあったっけ。  じっとりした視線が幾ヶ瀬の手に注がれている。  正確には有夏の肩を抱いた手、その接触部分をガン見してるではないか。 「み、見るな……っ!」 「えっ?」 「有夏を見るんじゃない! 霊めッ!」  思った以上に声が荒かった。  クソビッチはもちろん、有夏でさえも驚いたようにこちらを見返す。 「霊めって……幾ヶ瀬?」 「あ、いや、その……」  しまったというように視線を逸らせて、口の中で言い訳めいたことをゴニョゴニョ呟く幾ヶ瀬。 「やー、暑いですからねー。しょうがないですよー。夏ってこんな暑かったっけって感じですもんねー。そりゃ、沸きますよー」  クソビッチがフォローしてくるのが、これまた腹立つ。 「霊って…霊めって……」  有夏がいつまでも笑っているのも、また違う意味で腹が立つ。

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