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第4話 男の正体
「皐月、あの男はだれ?」
答える隙も与えず壁に押し付けられ、腕を掴まれて怖じ怖じと顔を見上げた 。
蒼は静かに微笑んで、何度も唾液を吸っては舌で口腔を弄った。
息絶え絶えにキスをされ、顎から唾液が伝った。
あれから二人とも他の客人に呼ばれて事なきを得たが、桐生もいつの間にかおらず、こっそりと帰ろうとする自分を蒼はホテルロビーで待ち構え、笑顔でこのスウィートまで手を引かれて連れて来られ、部屋の扉が閉まるや否や、すぐに唇を貪るようにキスをされた。
「……高校……か……ら……」
離れた唇の隙間から、たどたどしい声で呟いた。
さすがに高校から大学まで付き合って、全て捧げた相手とはいえなかった。
それを言ったら、大袈裟だが嫉妬深い蒼はどこかに閉じ込めて監禁しそうで怖かった。
「付き合ってたの? ……皐月、コロンの香が移ってる」
匂いを嗅ぎながら、手慣れた手つきで蒼はスーツを脱がしていく。
いつの間にかシャツも脱がされ、あられもない姿になっていた。
「………んっ……んん……」
逃げ場を失い、ただ蒼にされるがままに服を脱ぎ取られベッドに押し倒された。
上からのしかかるように体重を乗せて、ベッドに縫い留められた。
「しかも、桐生君にスーツを選んでもらうなんて…」
「……ぁッ……いたッ…………!」
溜息をつかれながら、首筋を噛まれ吸われた。
薄緑色の瞳は煌めきながらも、嫉妬の焔に燃えてぎらつかせていた。
「連絡も少ないし、凄く会いたかった……」
「蒼、ごめん。俺も会いたかった……んっ……」
そう言うと薄緑色の瞳を潤ませて、蒼は強く躰を抱き締めた。
「皐月、もう一回言って」
「ん……ぁっ……会いたかった……」
漏れ出た喘ぎ声を抑えて、頑張って言うと蒼は嬉しいそうに瞳を煌めかせて何度も唇にキスをした。
「嬉しい。僕も会いたかった。……皐月、好きだよ。愛してる」
電話で話す蒼との差異に驚きながらも、情熱的な蒼は軽いキスから深いものへ変換して蕩けそうだった。
「……ん、今日は連絡出来なくてごめん。蒼、好きだよ」
「良いんだ、君が元気そうならそれで。ただ、他の男といると気になってしょうがないくて、焼き餅焼いてたよ。」
「……全然、そん……なっ……あっ……」
蒼の頬に掌を当てながら、自ら唇を押しつけた。以前より気持ちをちゃんと伝えようと決めてから、少ない連絡とは対照的にそこだけは頑張っていた。
「……本当に好きなんだ。……ごめん、今日は我慢出来そうにない」
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