20 / 59

第20話

黒瀬と話しながら、いつの間にか機体の揺れに身を任せて夢うつつに眠ってしまっていた。 久しぶりに札幌で、蒼と初めて付き合った夢をみた。 あれは蒼といつものように珈琲を飲んで話していた時だ。 外は雪が降っていて、昼頃から風も強くなっていた。 いつの間にか窓から見える雪は深々と降り積もっていた。 そしていつの間にか猛吹雪に変わり、蒼が搭乗するはずだった飛行機は飛ばず、全てのフライトが全滅し、ホテルも予約しようにも全て満室になっていた。 『皐月、飛行機もホテルも全然ないよ……。どうしよう。』 蒼は困り果てて、捨てられた子犬のように携帯を見つめていた。 確かに予報では雪が降るとあったが、ここまで酷くなるとは予想できなかった。 明日には帰らなければいけないようで、蒼は急いで職場にも連絡し謝りながら予定を変更して貰っていた。 茫然となりながら残りの珈琲を飲む蒼は、悲愴感が増してほっとけなかった。 『………良かったら、部屋にくる?』 戸惑いながらも自分の部屋に誘うと、すごく喜んで満面の笑みで承諾された。 それまでは珈琲を飲んで下らない話をして、たまにご飯を食べるだけの関係だった。 1泊だけと思いながら、誘った自分がすごく緊張していたのを覚えている。 『皐月、本当に部屋に行ってもいいの?』 嬉しそうに蒼はそう言いながら、帰り道のコンビニで下着や酒、つまみを大量にカゴに入れていた。 入れすぎだよ……と窘めると、顔を真っ赤にしてごめんと謝っていた。 コンビニを出ると外は、止むことのない吹雪でとても寒かった。 蒼は寒がりなのか、厚手のコートの上にぐるぐると長いマフラーを顔が見れないほど巻いていた。 『ごめん。部屋が結構、寒いかもしれない……』 招待するには申し訳ないぐらいの狭さで、東京から越してまだ半年も経っておらず、家具も大して何もない状況だった。 そしてベッドも布団も一つしかなく、自分はどこで寝ようか懸命に頭の中で考えていた。 一緒に寝るわけにもいかず、かといって、こたつもないので、どうしようか本当に悩んでいた。 それでも蒼は泊る気満々なので、やはり一緒のベッドで寝るか自分だけ仕事をしつづけるかどうしようか迷っていた。

ともだちにシェアしよう!